第56話 冒険の後は

「■ゥ■■ァ!!! 」


 サーベルを手にした骸骨兵に狙いをつけ瞬間移動した俺は、ソイツの頭蓋を拳で粉砕する。


「ナイスなのにゃ! 」


(骨野郎にはやっぱ打撃だよなァ…! )


 攻撃が”特攻”となった際に得られる、独特な気持ち良さが拳を介して伝わってきた。


 アダムスコードにはゲーム内で最初から確認できるステータスの他に、全データ検索を掛けることで表示出来る隠しステータスと呼ばれる要素があり、その一つに攻撃特性がある。


 攻撃特性は物理や属性などをより詳細にカテゴリー分けしたもので、例えば物理攻撃には物理(斬)・物理(打)・物理(突)と三つの攻撃特性が存在しており。


 属性系である火属性にも火(焔)・火(陽)・火(獄)・火(爆)と四つの攻撃特性が存在している。


 敵の中には特定の攻撃特性に極端に弱いものがいて、この弱点を突くことで通常よりも遥かに大きなダメージを与えられる”特性一致攻撃”略して特攻となるのだ。


(盟友冒険隊で戦う敵は、男主人公とある程度共通だからな。 俺の知識も、ここじゃ腐らないぜ)


「あぅあぅあ! 」


 ティアの放ったウォーターボムが空中で破裂し、残る二体の骸骨兵に大量の水が降り注ぐ。


「今なのです! 痺れなさーい!! 」


 水属性攻撃共通の効果により雷防御力が大きく低下した骸骨兵目掛けて、ディンキーが帯電する鬼灯ホオズキの実を幾つも投げつけていく。


 ビジィッ!!


「弾けなさいなのです! 」


 ビジzィィッ!


 ドカーーーーン!!!!


 眩い雷光を放つ爆発に巻き込まれ、骸骨兵たちは消し炭となった。


(今のが…ディンキーの固有スキル。 チェリーベリースパークボムか)


 チェリーベリースパークボムはMPを消費して爆発する雷(爆)属性のホオズキの実を5~8個連続で投げつけるディンキー独自のスキルだ。


 MPを消費するが魔法ではないため、魔封状態などで魔法の詠唱が封じられていても発動できるスキルだったと記憶している。


 序盤までしかプレイしていない女主人公版のキャラも、最初から仲間になる最川班のメンバーはある程度情報を入れていたのでディンキーやブラウのスキルは見ただけでそれが何なのか大体は理解できる。


「ふぅ。 ティアさん、ナイスアシストなのです」


「あぅ! 」


「気を付けて、今の爆発音で周囲の敵が集まってきたわよ! 」


「にゃにゃ! 骸骨兵に紛れて、おっきな石像までこっちに来てるのにゃ…! 」


「あわわわ…! ご、ごめんなさいなのです…! 」


「■■、■■■ゥゥ! 」


(この程度、いくら来ようが問題ねぇ! 全部倒して、戦利品を奪ってやろうぜ!! )


「そうにゃ! がっぽがっぽなのにゃ! 」


「私が皆を強化するわ、存分に暴れてきなさい! 」


「う~! あぅあ~!! 」


「や、やってやるですよ! 」






 ◇◆◇






「皆、今日はお疲れ様」


「うにゃ~…久々に思いきし動いた気がするのにゃ~…」


「あぅ~…」


 盟友冒険隊として初の異世界探索を終えテストスター12から帰還した俺たちは、夕食と遠征の打ち上げを兼ねてブラウのハウスでパーティーを開いていた。


「■■ゥゥ」


(うまい、うまうま)


「テーブルに乗りきらなかったけど、まだまだ色んな料理を買ってあるから。 遠慮せずに、どんどん食べて頂戴ね」


「あぅむ、はぅむ…あうぅあぅあうあぅ! 」


「てぃ、ティアさん…! そんな勢いよく詰め込まなくても、料理は逃げませんよ…! 」


「んむ。 あぅあ~♪ 」


「あの小さな体のどこに、大量の料理が消えていってるのかホント不思議なのにゃ」


「■■ゥゥ」


(だよな…)


「ふふっ。 今日は沢山動いたから、その分お腹が空いたのかしら」


「いやいや、このスライム娘はいつでもどこでも腹ペコなのにゃ」


「あぅあぅあぅあぅ…! 」


「わわ! ティアさん! その葉っぱは飾りなのです…! ぺーです、ぺっ、して下さい! 」


「う? 」


「の、飲み込んじゃったのにゃ…! 」


「■■ゥ…! 」


(大丈夫か…! )


「毒はない筈ですが…たしかとっても苦かったような…」


「うぅ~? 」


「案外平気そうなのにゃ」


「あぅにゅ!? うぁぅ~!!! 」


「やっぱしダメそうにゃ!? 」


「た、大変…! 今お水を持ってくるわね…! 」


「■■ゥゥ…!! 」


(うぉ~! 頼む、ティア! 俺の鎧で口を拭かないでくれ~!! )


 そんな小さなハプニングが起こりながらも、楽しい夜を共に過ごし。


 同じ最川班の仲間として、俺たちの絆も少しは深まったような気がした。

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