第55話 テストスター
扉を越えた先に待っていたのは真っ白な砂浜と青い海。
この世界には曇りも雨もなく、夜も来ない。
毎日が快晴で、沈むことのない陽の光が永遠に世界を照らす。
大地を潤す雨粒が無くとも緑は生い茂り、川も海も涸れることはない。
「ふぉぉ! 海、海だにゃっ! 」
「うぁう~♪ 」
「わわっ! ティアさん…! 勝手に動き出しちゃダメなのですよ…! 」
(天気が荒れることもなく、毎日が暑くもなく寒くもない快適な気温。 こんでもって辺りを徘徊している骸骨や巨大な石像さえいなければ……バカンスにもってこいの場所だったんだがな)
「この世界に関しては既に、私たち以外にも数多くの盟友冒険隊が訪れているから。 どんな世界なのかある程度の事は分かっているの」
「なのです」
「ここは”創られて棄てられた世界” 不変を保とうとする偽りの星と、魂無き民が暮らす忘れられた世界よ」
「盟友冒険隊の皆さんからは”テストスター12”と呼ばれているですよ」
「テストスター12にゃ…? 」
「ええ。 私たちの調査の結果、この星は何者かによって創られた後放棄されたということが分かっているの。 他の世界でも、こういった星がいくつか見つかっていて……私たちはこれらの星が試作段階のものなのだろうと結論付けてテストスターと呼ぶことにしているわ。 12という数字は、単にこの星が12番目に異世界リストに登録されたからね」
「にゃるほどにゃ…」
「あぅ~? 」
「とにかくですね、この棄てられた星で今なお活動している”彼らは”一見生き物のように見える相手でも実際のところ命は宿っていないのですよ。 恐らく彼らは、星を創った何者かが外敵を排除するために作成した兵器の一種なのです」
「そして、そんな彼らを倒した時に手に入る素材やエネルギーは私たちやマスターにとって有用なものなの。 創造主無き世界を守護し続ける彼らを、破壊する行為に思うところがあるかもしれないけれど……そこは、まだ使えるリソースを再利用しているのだと考えて頂戴」
「あにゃしら悪魔からしたら、命があろうがなかろうが必要な物は必要なだけ上手にかっさらうだけなのにゃ」
「■■ゥゥ」
(ま、そうだな)
「ううぅ…やっぱりデモンの皆さんは怖いのですよ…」
「まったく…。 でもまあ、そうね。 それくらい割り切れているほうが今後もやりやすいと思うわ」
「あぅあ! 」
「あら…? どうやら、私たちが侵入してきたことに何体かの兵器が気づいたようね。 丁度いいわ、ここでマスターのいない戦闘に慣れておきましょう」
「あにゃしからすれば、勘を取り戻すだけなのにゃ! 」
「ふふっ、それもそうね。 魔界で生き延びてこられた貴方たちなら、何の心配もいらなかったわね」
「あぅ~!! 」
「骸骨兵三体! く、来るのです~! 」
「■■ァ! 」
(おっしゃ、蹴散らそうぜ! )
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