第53話 盟友冒険隊
アダムスコードでは、ストーリーを読みながら育成やアイテム収集が行える本編や他のプレイヤーとのバトルが楽しめる対戦モードの他にも様々なミニゲームが用意されていた。
ミニゲームにはそれぞれ独自の報酬が用意されており、やり込むことでさらに自分のキャラを強化することが出来たのでランクマッチで高みを目指すようなプレイヤーは隙間時間を見つけてはミニゲームを遊んでいたはずだ。
ミニゲームはアップデートのタイミングで追加されることもあり、俺が記憶する限りでも十数種類はあったが。
その中でも印象に残っているお気に入りのミニゲームが、盟友冒険隊である。
盟友冒険隊は、セインやデモンだけで組んだパーティーで様々な異世界を冒険し戦利品の入手を目指すマスター不在のゲームモードだ。
ここでしか入手できないアイテムや幻異武装、強化素材などが存在し。
星の縛りがない専用のバトルを楽しめることもあってユーザー全体からの人気もかなり高かった。
「マスターたちも最川班として本格的に動き始めた今、私たちも盟友冒険隊を結成し活動し始める頃合いだと思うの」
ミツル先輩のセインであるブラウに呼び出され、彼女のハウスに集まった俺たちはそんな盟友冒険隊についてちょうど説明を受けていたのだ。
「でも、マスターと離れて。 あにゃしらだけで異世界に行くってことは、バトルになったらガチンコってことなのにゃ」
「ううう…それが不安なのです……」
バトルはガチンコと聞いて、ディンキーは空のコップの中に身を潜めてしまうが。
”死ぬようなことはない”のでそこまで心配しなくても大丈夫だろう。
「そんなに心配しなくても大丈夫よ。 マスターと契約している限り私たちは倒されてもお墓になるだけで時間がたてば復活できるんだし」
「うぅ…。 それでも怖いものは怖いのですよぅ…」
ブラウがいう通り、マスターと契約するデモンやセインは人間界や異世界での戦闘により倒されると強制的に盟友界に戻されお墓になる。
お墓になるといっても俺たちは完全に死ぬわけではなく、お墓はいわば個人用の緊急治療室のようなものなので治療を終え時間がたてば復活することが出来る。
この仕組みがあるからこそ、マスターは安心して育成途中のデモンやセインを戦わせることが出来るのだ。
(まあ、一度倒されたらもう二度と召喚出来ませんってなったらゲームとして成り立たないもんな)
とはいえ、男主人公である立花レンのストーリーではデモンやセインを”完全消滅”させられる力を持った天使や悪魔も登場していたので。
もしもソイツらとやり合うような事になれば、俺たちとて死ぬ可能性はあるのだが。
(それに、俺たちが墓になっている間にマスターが死んじまったらそれこそアウトだしな)
俺たちが墓になって復活できるのはマスターと契約しているからこその特権であり、現にマスターを持たない天使や悪魔は死亡と同時に消滅している。
勿論天使や悪魔のなかにも、ベニイチとソウジのように特殊な力で復活できる者も存在するが。
デモンやセインのように自身の能力に関係なく復活できるということはない。
(マスターと契約するデモンやセインの中には、この復活を目当てにしてくる奴もいたくらいだし。 悪魔や天使にとってもそれだけ破格の力なんだろう)
「盟友冒険隊は基本、同じ班のセインやデモンで組むことになっているから。 最川班に所属する私たちの中から毎回メンバーを選定して活動していくことになるわ」
「そういえば…ブラウやディンキーのマスターは他にも契約している仲間がいるって話だったにゃ」
「ええ。 今日は用事があって来れてないけど、ローテーションを組めるくらいのメンバーはいるから今度改めて紹介するわね」
「あぅあ! 」
「口頭で説明しているだけだと、分からないことも多いだろうし。 さっそく、今いるメンバーだけで異世界探索に挑戦してみましょうよ」
「えぇ…今からですか…」
「ディンキーが露骨に嫌そうな顔をしているのにゃ」
「今日は”はじめての子たち”もいるから軽く回ったらすぐ帰る予定だし、ディンキーも先輩としてそれくらいは頑張りなさい」
「ぅう~分かったですよーだ」
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