第49話 来るか行くかの違い

 楔の主であるベニイチを倒したことでスミマル第二は消滅し。


 ミサキとアイカ、二人の初となる異界域攻略任務は幕を閉じた。


 後日、ミサキは独断で行動したことへのお叱りを受けることになってしまったが。


 結果的には獅子柄班を助けることが出来たので、その点については叢雲も評価しているらしい。


(無事に攻略任務が終わって、まずは良かったが…)


 スミマルC内で大量に発生していたというロストコアについては現在も調査中であり、何が原因なのかは未だ判明していない。


(厄介なことにならなきゃいいんだがな…)






 ◇◆◇






 セインやデモンが固有の力を持つように、天使や悪魔にもまた強力な独自の力を持つ者がいる。


 属性に紐づけられた能力とは違い、個が有するオリジナル能力は己を失う事で共に失われてしまいロストコアになった天使や悪魔は如何に強大な力を持っていたとしてもそれを扱う事は出来なくなってしまう。


 そして、力を失う以上に問題なのは。


 ロストコアになることで自分で自分を認識出来なくなり、ただ動き暴れ食らうだけの怪物に成り下がってしまうということだろう。


 それ故に天使や悪魔はロストコアへ至ることを恐れ、力なき者は異界へと出向くことを躊躇するのだ。


 とはいえ、本来であれば。


 一定以上の力を有する天使や悪魔が、天界や魔界から出ることで己を失うような事態は起こらず。


 ロストコアになるのは、己が力を見誤った者か楔の主に巻き込まれる形で意図せず世界の境界を跨いでしまった弱き者たちの筈なのだ。


「大量のロストコア、彼らがたまたま巻き込まれてしまっただけの存在とは考えにくいね…。 これはいよいよ、会長がいってた話の信憑性も増してきたというわけか」


 獅子柄班から受け取った異界域の調査報告書を机に置いた水嶋ナギサは、召喚デバイスをタップしメッセージを立ち上げた。


「天使や悪魔がこちらの世界に来れるなら、人間だって奴らの世界に行けるはず…なんて。 恐ろしい事を考える人だよ…まったく」

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