第48話 マッスル・フレンド・スペシャル
弟のソウジが一度死ぬことで持ち帰った情報により、兄であるベニイチはジャック対策として物理攻撃を無効化するスキルを得ただけではなく。
獅子柄班のメンバーと契約するセインたちの魔法攻撃にも対抗するため、高い魔法耐性まで有してしまった。
防御カテゴリーに属する〇〇耐性というスキルはダメージを割合で軽減する効果があるため、今のベニイチと魔法攻撃だけで渡り合おうというのはかなり無謀な行為といえる。
物理無効と魔法耐性という堅牢な守りを突破し、ソウジとベニイチを二体同時に倒さなければいけないという困難な状況だが。
(それを打破するスキルが俺にはあるんだよなァ! )
「■■ゥ■■ァァァァァ!! 」
魔力を用いて喚び出した巨大な戦旗を掲げ、俺は雄叫びを上げた。
同族の血潮で染まった朱色の旗をはためかせ味方を鼓舞するこのスキル”戦旗招来・殲滅”は。
自身に2ターンの行動不能状態及び敵視超上昇状態を付与する代わりに、味方全体に1ターンのみの必中貫通(物理)を付与し物理攻撃力を3ターン大幅に上昇させるという効果を持っている。
(コイツを使えば…! ジャック!! )
「ウォォォォッ!! いける、いけるゼッ!! 」
「うるせぇ! ジャック! 何がいけるってんだ!! 」
「今なら奴らを、ぶっ飛ばせるってことだゼッ!! 」
「…!! 本当だろうな!? 」
「■■ゥゥ! 」
「エデンも、今ならやれるって言ってます! 」
「アミさん、それなら…! 」
「ああ。 いつも通りいくぞ! 」
「はい! 」
「了解! 」
― コマンド承認 ―
― コマンド承認 ―
獅子柄班のマスター、イオリとスズミが指示を送り二人のセインがそれぞれジャックにバフを付与していく。
「きたきたァ!! 力が漲ってきたゼッ!! 」
「ふん、無駄なことを。 その蛇男の攻撃はワタシには通用しませんよ」
「ここにきてまだ、それが分からないとは。 哀れな奴らですね、兄様」
― コマンド承認 ―
「あぅあ~!! 」
ベシャッ。
双鬼の話を遮るように。
物理無効化のスキルがあるという安心感から、油断し切っていたベニイチの顔面にティアが放った粘液弾、スライミーポイントが直撃した。
「こ、この…! よくもワタシの顔にこんな汚物を…! 」
「貴様ァ!! よくも兄様の顔に…!! 下等デモンがッ! 真っ先にお前から捻り潰してやるから、覚悟しとけッ!! 」
「ぅあぅ~!! 」
青筋を浮かべながらブチ切れるソウジ。
彼には悪いが。
(お前たちのターンは回ってこないぞ)
「■■ゥゥ!! 」
(ジャック! 今だ、やっちまえ!! )
― コマンド承認 ―
「おうよ! マッスルフレンドがくれたこの力…無駄にはしねぇゼッ!! 」
鱗に覆われたジャックの右腕に、赤紫の光るラインが浮かび上がる。
「コイツで仕舞いだッ!! 」
ジャック・エクリプス・スペシャル。
一度の戦闘で一回までという発動制限が設けられているこのスキルは、100%のクリティカル確率が付与された物理の全体攻撃となっている。
(クリティカルの基礎倍率は二倍! 盛られた火力バフに、ジャックの防御力無視まで加われば…! )
「オラッ! 食らいやがれッ!! 」
ジャックが地面を殴りつけた、その瞬間。
空気が、大地が、揺らいだ。
「なにを―― 」
「がッ―― 」
攻撃を受けた。
そう奴らが理解するよりも先に、その身体は弾け飛んでいた事だろう。
殴打の衝撃で大きく陥没した地面に、ベニイチとソウジ”だった”赤黒い染みだけが残されていた。
「これがオレっちたちの、友情パワー。 マッスル・フレンド・スペシャルだゼッ」
「■、■■ゥゥ…」
(いや、だからマッスルフレンドってなんだよ…)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。