(NEW)第18話 ええっ、初回無料召喚が二回出来るって本当ですかっ!?

 初期装備をお披露目してくれた後、ミサキから聞いた話によると。


 マスターとして現場に出る前にまず、訓練施設である仮想異界域01を攻略しなければならないらしい。


(ふむ…この辺りの展開は俺の記憶とも合致しているな。 だが―― )


 今の時期はまだ問題ないのだが、この先の事を考えると俺には一つ気がかりなことがあった。


 アダムスコードでは主人公の性別によって登場する敵キャラや好感度イベントが存在する仲間キャラに違いがあったりと、人間関係や物語の展開が大きく異なり。


 そのため、自身が選択した性別とは異なる方のストーリーはもしもの世界の記録としてゲームのアーカイブ機能からチェックするという形で楽しめる仕様になっていたのだ。


 俺はアダムスコードのヘビーユーザーではあったのだが、一番のめり込んでいたのはランクマッチでいかに上位に食い込めるかという対人戦の要素だ。


 立花レン、つまり男主人公を選択しゲームを遊んでいた俺は男主人公のシナリオは更新される度に追加された最新のストーリーを楽しんでいたのだが。


 女主人公である立花アイカのシナリオに関しては、アーカイブ機能によりストーリー部分だけを閲覧できる仕様だったのでバトルや攻略の要素がなく戦闘や探索による報酬もないためほとんど確認していなかったのだ。


(俺が辛うじてチェックしていた女主人公のシナリオは仮想異界での基礎訓練を終えて、最初の異界域を攻略するところまで……)


 つまり、その先のシナリオ未来はゲームのプレイヤーであった俺にとっても未知のもの……初見攻略になってしまう。


(もちろん主人公の性別に左右されない天使や悪魔のデータとか、この先も使える知識はあるが……データがあるからといって安心できるほど甘い世界じゃないしな)


 俺がプレイしていた男主人公のシナリオでも、初見殺しのような難所がいくつも存在していたことを考えれば今のうちから出来る限りの準備はしておいた方がいいだろう。


(そう考えると、ミサキには出来るだけ早く新しい仲間を召喚してもらいたいな)


 死滅の騎士エデンは、最高レア度のデモンの中でも単独での戦闘に優れたデモンなのだが。


 マスターが新米で所謂マスターレベルが低いうちは、俺のレア度が”SSS”であるということがある種のデメリットになってしまうのだ。


(恐らく、ミサキの先輩たちにはその辺りの知識がある筈だし……何とかしてくれるといいんだが)






 ◇◆◇






「さて。 明日からは貴女たちの当面の目標である仮想異界域の攻略に向けて、戦闘の基礎知識を教えていくのだけれど……。 その前に、日野さんには新しいデモンかセインを召喚してもらうわ」


「ええっ、私だけ!? ど、どうしてですか? 」


「理由は二つ。 新人のマスターには叢雲からデモンストーンかセインストーンが必ず一つ支給される決まりになっていて。 立花さんはあの時、異界域で渡したデモンストーンが支給品扱いになったから問題ないのだけれど。 貴女の場合は私物の召喚石であのデモンを喚んでしまったから、叢雲からの支給品をまだ受け取っていない状態なのよ。 これが一つ目の理由ね」


「そして、もう一つの理由は。 貴女が召喚したデモン、エデンといったかしら…。 彼の召喚ランクが新米マスターにとっては高すぎるということね」


「召喚ランク? 」


「ふふっ、その辺りの説明はミツルちゃんにかわって私がさせてもらうわね」


 どこからか移動式のホワイトボードを引っぱってきたマイさんが最川先輩に代わって教壇に立った。


「まずは大前提として。 マスターが異界域の中でデモンやセインを喚ぶためには、召喚力……っていう生体エネルギーが必要になるのだけれど」


「召喚力は、デモンやセインを召喚する時に一度大きく消費して。 その後は召喚している間中、継続的に消費していくことになるの」


「そして、この召喚力の消費量を元にランク分けしたのが召喚ランクね」


 マイさんは黒いマーカーでホワイトボードにビーーーーッと矢印を引くと。


 そこに、F→E→D→C→B→A→S→SS→SSSとアルファベットを書いていった。


「この矢印を見て分かる通り。 召喚ランクは、召喚力の消費量が最も少ないFから最も多いSSSまであるの」


「召喚デバイスに登録されたデモンやセインは自動的に召喚ランクが算出されて……ほら、このページ。 ミサキさんのデモンであるエデンさんの召喚ランクは最上位のランクであるSSSと表示されてるわよね? つまり、学園のように召喚力を消費しない場所で彼を喚んでいる分には何も問題ないのだけれど…」


「異界域の中に入ったら、召喚力をいっぱい消費しちゃう……ってことですよね」


「その通りね。 召喚力は、消費するばかりじゃなくて自然に回復もするしマスターとして成長していけば召喚力の総量自体も増えていくのだけれど。 はじめのうちは自然に回復する速度も召喚力の総量も少ないから、召喚ランクが高いデモンやセインを召喚するとすぐに召喚力が尽きてしまうのよ」


「そんな…」


「ただ、召喚ランクが高いという事はそれだけ強力な存在である証明でもあるの。 だから、ミサキさんの召喚力が少ないうちはタイミングを見極めてここぞという時に彼を喚ぶといいわよ」


「なるほど…! 」


「そういうわけだから、ミサキさんにはもう一体…できれば召喚ランクの低いデモンかセインを喚べるようにしておいてもらいたいのよ。 ね、ミツルちゃん」


「ええ。 叢雲からの支給品はセインストーンとデモンストーン、好きな方を選べるから。 決まったらさっそく召喚してみましょう」


「ふふっ、どちらにしましょうか? 」


「えっと…それなら、私は―― 」

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