(NEW)第10話 恐ろしき猫娘

「急いで決める必要はないわ」


 最川先輩は答えを今日中に出す必要はなくて、焦らずによく考えて決めて欲しいと言ってくれた。


 だけど、二つの選択肢を聞いた時。


 どちらを選ぶのか、私自身がどうしたいのかすぐに決まった。


 マイさんの言う通り。


 叢雲に保護されて暮らせば、今日みたいな危ない目に遭わずに済んで…あんな怖い思いをしなくても済む。


 でも私は、怖い思いをしたからこそ…あの恐怖をこの身で味わったからこそ。


 自分や大切な人たちが暮らすこの世界の安全を、他人任せに出来ないって。


 そう思ったんだ。


「決めました。 私、マスターとして戦います」


「ミサちゃん…? 」


 日野ミサキ、16歳。


 誰かに語りたい程の出来事もなく。


 かといって退屈という程でもなく。


 何でもないって言葉が、一番似合う気がする。


 そんな日常は…今日でお終い。


 マスターとしての戦いは命懸けで。


 娘の私が、わざわざそんな危ないことをするって知ったらお父さんやお母さんは怒るかな?


 それとも、悲しむのかな。


 ううん、きっと。


 心配して、そんなことはやめなさいって、叱ってくれるんだと思う。


 でもね、私は後悔したくない、悔しい思いをしたくない。


 お父さんやお母さんにもしも何かあった時、どうして護ってくれなかったのって人のせいにしたくない。


 だからね。


「ミサキさん。 本当に、それでいいのね? 」


「はい。 私は…護られるんじゃなくて、大切な人を護れるようになりたいんです」






 ◇◆◇






「■■~■■ァ■■■■~」


(ほえ~ここが盟友界か~)


 マスター、日野ミサキとの契約を果たし。


 ついに血みどろの戦場、魔界からの脱出を果たした俺氏!


 人間と契約を結んだセインやデモンたちが築いたこの盟友界には、殺意剥き出しで襲ってくるような悪魔も、謎の執着をみせて追いかけてくる悪魔もいない!!


「■ォォォォォ■■■■■■ァァァァァァ! 」


(うぉぉぉぉぉここは楽園だぁぁぁぁぁぁ! )


「ぶにゃ~!!? ちょっ、アンタ、急にニャにを叫んでるのにゃ!? 」


「■? 」


(む? )


 振り返れば、猫がいた。


 黒猫だ。


 尻尾の先端に紫炎を灯し、背中にはコウモリのような小さな羽根を生やしている。


 そんな黒猫は地面からパタパタと飛び立つと、俺と同じ視線の高さまで上昇し腰に手を当てふんぞり返った。


「ぶにゃん。 にゃにか言ったらどうだにゃ」


「■、■■■ー!? 」


(め、メアリー!? )


「うにゃ!? にゃ、にゃんだ、アンタ…。 あにゃしの名前はメメアリーじゃにゃくて、メアリーだにゃ。 というかアンタ知り合いだったかにゃ? それとも情報を抜き取るスキルをもってるにゃ? まあとにかく、アンタのマスターとあにゃしのマスターはトモにゃチみたいだし…これからよろしくなのにゃ」


 メアリー、黒猫のようなこのデモンは原作主人公である立花アイカがチュートリアルでデモンストーンを選んだ場合に召喚されるアダムスコード二大看板キャラの片割れ…。


 覚醒昇華後の姿に魅了され、獣っ娘好きになってしまったマスターも少なくないというあの…!


「■■■■■■…! 」


(恐ろしき猫娘…! )


「にゃ? アンタあにゃしの本当の姿を知ってるのかにゃ?? 」


「■? 」


(ん? )


「ん? じゃにゃいにゃ! とぼけても無駄にゃ! 今にゃこ娘って聞こえたにゃ! あにゃしの名前も知っているふうだったしプニャいバシーの侵害だにゃ! 」


「■ゥ…! 」


(お前…! )


「な、なんだにゃ…! あにゃしは本当のことをいっただけにゃ…! 」


「■ォォォォォォォォ!! 」


(うぉぉぉぉぉぉぉぉ!! )


「ぶにゃ~!!?!? ご、ごめんにゃさい~!!! ミンチは嫌だにゃ~!! 」


「■、■■■■■■■■■ー!! )


(お、俺の話が通じてるぞー!! )


「…………にゃ? 」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る