第8話 私のお守り
保健室のベッドで意識を取り戻した時、目尻に涙を浮かべたアイが私の胸に飛び込んできて。
助かったんだ…まだ生きられるんだって思ったら、いろんな感情がごちゃごちゃになって。
アイと二人、子供みたいにわんわん泣いちゃった。
お互いの無事を確かめるようにぎゅっと抱きしめ合っていた私たちがようやく泣き止むと。
最川先輩ともう一人、同じ制服を着たお姉さんが扉を開けて入ってきて。
もしかしたら泣き声を聞かれちゃってたかもって、ちょっと恥ずかしくなっちゃった。
そして今。
「――というのが、貴女たちの今置かれている状況よ」
「あんな事があったばかりで、まだ色々と不安だと思うけど…。 一先ずここに居れば安全だから、安心してちょうだいね」
最川先輩と、その学友だという桃原マイさん。
二人はさっき私たちを襲った悪魔や、天使と呼ばれる異界の存在から人々を護るためにデモンやセインを召喚して戦うマスターとして活動していること。
そして、日ノ照のマスターが集う組織”
ここが叢雲に所属するマスターの育成機関、新東都女学園の保健室であること。
私たちの両親には既に連絡を入れてあり、今日は家に帰らなくてもいいことなど。
いろいろと丁寧に教えてくれた。
「その…私たちを助けてくれて、ありがとうございます」
「そんな、結局私は貴女が連れ去られたあの時何も出来なかったわ。 お礼なら後で、貴女が召喚したデモンにするといいわよ」
「私の…デモン? 」
「はい、これ。 先に返しておくわね? 異界域から持ち帰った物は調査の対象になるから、私たちの方で少し調べさせてもらったんだけど…。 規約とはいえ、ミサキさんの私物なのにごめんなさいね」
「これ…私のラッキーストーン」
「うん、ミサちゃんの傍に落ちてたんだよ。 ミサちゃん、昔からその石を大事にしてたから一目で分かったんだ」
「調査の結果、その石はデモンとセインそのどちらでも喚び出せる可能性を秘めた特別な触媒”召喚石”であることがわかったわ。 既に召喚を終えているから、今はもう力を失っているみたいだけれど」
「もしかすると召喚に使われる前はもっと綺麗な石だったんじゃないかしら? 」
「えっ…? 」
「セインストーンもデモンストーンも、そして召喚石も。 召喚を終えて触媒としての役目を果たしてしまうと、輝きを失ってしまうものなの」
「ほら、ミサちゃん。 これ。 わたしが最川先輩に使わせてもらったデモンストーンなんだけど……。 召喚する前は宝石みたいにキラキラしてたのに、今は普通の石みたいになっちゃってるんだぁ」
「……!! なら…」
(あの時のは、私の見間違いじゃなかったんだ…! )
涙みたいで綺麗だった蒼い石。
私のラッキーストーンは、その輝きを失っちゃったけど…。
たしかに、私を護ってくれたんだ。
(ありがとう…私のお守り)
「ここまで私たちが所属する組織や、この学園について簡単に説明してきたけれど。 ここからは貴女たち二人のこれからの事について話していきましょう」
「これからの…」
「こと、ですか…? 」
「ええ、ミサキさんアイカさん。 二人と、二人の周りの人たちに関わるとっても大事なお話よ」
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