第4話 夢の終わり
歩きながら
「ここならやれそうね…」
最川先輩は上下左右が滅茶苦茶に入れ替わり有り得ない位置から電柱が突き出したトリックアートのような路地裏に私たちを連れ込むと、鞄から携帯用のトークデバイスに似た形状の端末を二つ取り出しこちらに手渡してきた。
「最川先輩、なんですか…これ? 」
「言ったでしょ、自衛手段を確保するって。 本来なら私が貴女たちを護るべきなんだけど…。 ここまでの戦いで私も大分力を消耗しているの…。 だからもしもの時は、貴女たちにも戦ってもらう必要があるわ」
「た、戦うって…」
「もしかして、あのモヤモヤとですか…? 」
「モヤモヤ…。 そうね、恐らくソイツであってるわ。 正確に言えばその靄のような”奴ら”だけど」
「奴らってことは…」
「他にもいる…ってこと、ですよね」
「ええ。 でも今は、その話は後にしましょう。 まずは手渡したそのデバイスを使って、貴女たちには召喚を行ってもらうわ」
「召喚? 」
「召喚って…あの、何かを喚び出したりする召喚ですか…? 」
「その通り。 幸い手持ちに未使用のセインストーンとデモンストーン…召喚に必要な触媒があるから難しい事をしなくても貴女たちを護ってくれるセインやデモンを喚び出せるはずよ」
最川先輩曰く。
人間に力を貸し共に戦ってくれる天使や悪魔をセイン、デモンと呼ぶらしい。
それならわざわざ、名前を変えずに天使や悪魔と呼べばいいじゃないかと最初に聞いた時は思ったけど。
私たちの世界に干渉し、人々に害をなす天使や悪魔もいるためあえて名称を変えているのだという。
「この異界域に迷い込んだ貴女たちなら、セインやデモンを召喚できるはずよ。 さあ、このセインストーンかデモンストーンを使って今すぐ召喚を――
「□!△×?〇! 」
「えっ…」
「ミサちゃんっ!! 」
ぐわんと。
体が強い力で後ろに引き寄せられる感覚。
「いけない…! 貴女、手をっ…!! 」
最川先輩が伸ばした手を掴もうと、必死に腕を前に伸ばす。
(ダメ…届かない…! )
「ミサちゃんっ…! 」
「行ってはダメよっ! 」
ぐんぐんともの凄い勢いで二人から引き離されていく私を、アイは追いかけようとするが最川先輩が後ろから抱き着きつきその場に押し留める。
「離してっ!! 」
(……アイ)
なんとなく。
そう、なんとなくだけど。
私がこの後どうなるのか、想像がついてしまった。
「アイ、来ちゃダメっ! 」
いつも、ちょっとだけ夢見ていたこと。
摩訶不思議。
普通じゃなくなった商店街で目覚めたあの時、普通じゃないことが起こりそうって。
少しだけ、ワクワクしちゃった。
物語のような、誰かに語りたい出来事が起こって。
主人公みたいな特別に、なれるかもって。
「馬鹿みたい――
さあさあ、私。
もうすぐ夢から覚める時間だ。
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