VS国島勝也、岸野京介、樫木康太
◆VS
「おいおいこりャ〜どーゆぅこったー?」
僕は後ろからの声に振り返った。
国島勝也だった。脇には岸野京介、樫木康太もいる。サッカー部の面々だ。
忘れもしない。
死ぬ前に僕に飛び蹴りをして遊んで、笑っていたやつらだ。何回も何回も、何度も何度も、僕を蹴った。よくもやってくれたな。
「奴隷が奴隷を襲ってりゃ」
「人様の奴隷に手を出すのはご法度だぜ?」
「でも奴隷に法なんてあんのか? ん? 無いから襲ってんのか?」
生前の現世だったら、彼らが近くにいるだけで緊張した。見られただけで体が震えた。
でも今は違う。僕は簡単にこいつらを呪殺する力を手に入れたんだ。不死の体になって。
怖いものなんてない。
「おい奴隷君よォ、俺の藤美ちゃんに汚ねえ手で触んなや。わざわざ見張りをヨソへやって、恥も外聞も忘れて今夜は藤美ちゃんと楽しむって決めたんだよ」
「昔話してたらよ、盛り上がっちゃってさ」
「そういや奴隷でいたよな、うちらのマドンナが、ってよ」
僕は嬉死んだ賢木さんを近くの木にもたれさせた。パチリと賢木さんが蘇る。再び、超至近距離でぶつかる視線と呼吸。
「くぅっ!」
また死んでしまった……。でもまぁ危ないだろうし、ちょっと眠っていてもらおう。
「おい奴隷、無視すんなや」
ある程度の距離があったはずなのに、すぐ真後ろで国島の声がした。
「スキル【
ああ、そういえば脚が速いんだっけ。小学生だったらモテただろうね。
気になることを試させてもらうことにした。僕の使える呪いは「呪殺」だけなのか、それとももっと他に応用がきくのか。
「無視すんなって!」
振り返ってやると同時に、国島に肩を短刀で刺された。飛び蹴りとは比べ物にならない痛みが僕の脳天まで突き上げてくる。
「ぐぅああああああ!」
僕の悲鳴に3人が高らかに笑った。
「ギャッハハハ!」
「奴隷がいきがってんじゃねえよ! アッハハハ!」
「ギャハハッ! は、は? ……はぁ?」
3人の笑いが止まる。ただし、依然あたりは笑い声に満ちていた。
僕の声だ。
「あはははははははははははははははははははははははははははははははは」
肩を刺されながら笑う奴隷に、彼らは恐れを抱いたらしい。
おかしくてたまらない。
「何笑ってやがる、こいつ…………ん? あ、ああ……あァァーッ!」
国島が自分の手を見て情けない声を出した。
無理もない。自分の手がゲル状にドロドロと溶け、骨が露出したのを目の当たりにすれば悲鳴の一つも上げたくなるだろう。
「ハハっ、成功みたいだね。お前に呪いをかけたよ、国島勝也! お前はこれから刃物を使った手が溶けるようになる」
僕は自らの肩から短刀を引き抜き、国島がしたようにやつの肩に突き刺した。
「ガァァアアアアア!」
国島の悲鳴に、僕はまた笑った。だけどその直後に僕も苦痛に顔を歪めることとなる。
手が、溶けていた。
「そうだった。呪いは返ってくるんだよね」
溶けていく右手。肘から下がべちゃべちゃに溶け落ちた。激痛だ。だけどそれ以上の高揚感が胸を躍らせる。
「国島クン、次はどんな呪いをかけられたい?」
「おま、お前、ナニモンだよ……。岸野! 樫木! ぼやっとしてねェでなんとかしろ!」
「おっ、おう!」
岸野と樫木の2人が腰の小さなポーチに手を入れた。取り出したのは、どんな超理屈で収納されていたのか、槍とサーベルであった。またセンスの悪い装飾の。
「スキル【
「スキル【
岸野が空高く跳び上がった。槍を真下に構えている。降下して僕を串刺しにする狙いが見え見えの大技。
樫木は離れた位置から回し蹴りをした。なんと脚が伸び、蛇のようにしなって僕の脇腹を強かに蹴った。
パンっ! と乾いた音が鳴った。
「がぁッ!」
肋骨が折れたのが分かった。
「はァッ、今の音が聞こえたかクソ奴隷ぇ! 鞭と同じさ、俺の足の先でソニックブームが起きたんだよ! 俺の蹴りは、音速を超える! そして!」
すぐに次の蹴り。その2発目は僕を拘束するための攻撃だった。伸びた脚が巻き付いて、動きがとれない!
頭上から声が降り注ぐ。
「そしてぇ! オレの槍、グングニルがぐるぐる巻きのオマエを頭のつむじからケツの穴まで串刺しにするぜぇ! そう! まるでアスパラベーコンのようにな!」
岸野が高笑いして降下してきた。言葉が先に届くということは、こっちの串刺し攻撃は音速を超えてないか。
「死ねーー!」
宣言通り岸野の槍は僕を上から下まで貫いた。
「へへ、楽勝だゼ。おい大丈夫か、国島ぁ? 肩かすぜ」
「病院行こう。アイツのスキルなら治るよ。てか、やっぱ俺らのコンボは無敵だぜ」
「おま、おま、お前ら、向こうを見ろ……!」
「はぁ?」
間抜けヅラ。
僕は3人が口をあんぐり開けて言葉を失う様子に哄笑を響かせる。
「ばかな、死んだはずだ! たしかに貫いた……」
「なんだよあれ! 死ぬどころか、傷が全て完治してやがる!」
蹴られた痛みも、溶けた腕も、治った。
「そうさ! お前らの攻撃なんて、無かったことになってしまったよ、残念だったね! だけど? 君たちのしたことは無くならない。僕にしてきたことは、決して覆らない。僕はあの痛みを忘れちゃいない!」
僕は蘇生した際に体から弾き出された槍を手に3人に歩み寄った。
「ねぇ、ゲームをしようよ」
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