第20話ヴァルプルギスナハト

 ワルプルギスの夜が開催されるのはハルツ山地の最高峰、ブロッケン山である、本で読んだ!

 開催時期は4月30日の夜から5月1日の朝まで、何とか日にちも間に合った。

 魔女の祭典では山の中の拓けた部分、その真ん中に大きなかがり火が炊かれていて、その周りで無数の魔女たちが大騒ぎしていた。


 あられもない姿で踊り狂う魔女。

 その魔女が信仰していると思われる山羊頭の悪魔を召喚して、何やらえちえちな事をしている魔女。

 お互いの魔術を披露し合っている魔女たち。


 かがり火のまわりで思い思い祭りを楽しむ魔女たちであったが、僕がびっくりしたのはその魔女たちの容姿がみな若く美しい事であった。

 魔女っていうのはわし鼻のおばあちゃんじゃないのか。


 とか思ってたら居たわ、わし鼻のおばあちゃん、如何にも魔法が得意そうだ。

 何かキョロキョロうろうろしているが、あの人に魔法を教えて貰えないだろうか。


「あの〜すみません、僕に魔法の使い方を教えてくださいませんか?」


「ほえワシかえ?ワシなどはまだまだヒヨっ子人様に魔法を教えるなどとんでもない、自分の身を若く美しく保つ事すら儘ならぬのじゃからな、そうじゃワシの師匠を紹介してやるゾイ、師匠は魔法の達人でそれにお優しい方じゃ」


「うわぁそうなんですねこれは期待せずにはいられませんね、是非ともお願いします、僕の名前は不破明日斗と言います、魔女さんとお師匠様の名前は何とおっしゃるのですか?」


「ワシの名はペトロニーラ、師匠のキテラ様はワシの何百倍も優れた魔女であるゾイ」


 ペトロニーラさんに連れられて、お師匠様の元へとやって来たが、驚いたのはその見た目、若いなんてもんじゃない、えっ子ども?クリスよりもまだ幼い、小学校で言えば低学年くらいであろうか。


 ペトロニーラさんが何やらそのお子さんの耳元で、ゴニョニョ説明してくれているようだ。


「ほうファーストというのかよく来たワシがキテラじゃ、お主大変な魔力を秘めているようじゃがその扱い方が解らぬとな」


「そうなんですよキテラ……ちゃん?様?魔力はあっても使い方が解らなくて困ってます、1度だけ大きなのを使えたのですがその後はサッパリで……」


「ワシは既に800年の時を生きておる、見た目でちゃん呼びするか中身で様付けするかは、お主に任せるのじゃ」


「失礼しましたキテラ様、僕に魔法を教えてください!」


「うむよろしいのじゃ、お主文字は読めるか?魔術書などは読んだことがあるか?精霊魔法などは力を借りる為の言葉が必要じゃが、お主は内なる力を引き出す為の言葉が必要なのじゃろうな、言霊を持った力ある言葉がじゃ、聖神教の聖職者などは聖典の一節を読むことで神聖魔法を使えたりするしのう」


「本なら沢山読んできました、が力ある言葉……小説の一節、いやっ詩か!」


「何か掴めたかのぉではあのかがり火を消してみるのじゃ!」


「雨風のさわがしき音よ悲しみに呆けし我に、雨風のさわがしき音よ!」


 物凄い雨風が起こりかがり火が消えた、そして魔女たちの大ブーイング。


「うわわわわぁ直ぐに火をつけるのじゃ!」


「偉大なるプロメテウスは人の為、天上から太陽の火種を盗み我らに与えたもうた、その恩恵よここにあれ!」


 再びかがり火が燃え上がる、今度は魔女たちからの盛大な拍手が起こった。


「良いぞその調子で色々魔法を試してみるのじゃ、使いたい時に使いたい魔法を使いたいように使えるようになる為になのじゃ」


 魔法の使い方を覚えた僕は夢中で色んな魔法を試してみた、魔力なら♾だ!

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