第4話
家に帰った私が真っ先に取った行動は、パソコンを開いて[女性同士 性行為]で検索をかけたことだった。
怪しげなサイトをクリックしかけて、やめる。クリックしかけて、やめる。そんなことを繰り返していると、携帯電話の着信音が鳴り響いた。電話ではなく、メールだ。リクさんから。
『今日はありがとうございました。またお会い出来る日を心待ちにしております。お身体に気をつけて』
当たり障りのないメッセージが連なった、絵文字すらない営業メール。だけど
「またお会い出来る日を心待ちにしております……」
その一文が何よりも嬉しくて、なぞり、復唱する。
『こちらも営業ですからねー』
開き直るように笑う彼女の声がこだまする。分かっている。分かっているけど、営業でも、もう一度会いたいと言ってもらえて嬉しかった。
『あまりのめり込みすぎちゃ駄目ですよ』
大丈夫。のめり込むわけがない。私は男性が好きだから。女性を好きになったことなんて、一度もない。彼女がカッコいいから脳が勘違いしているだけだ。
そう言い訳をしながら、私は彼女が務める風俗店のサイトを開く。
改めてヘルスコースの料金を見ると、デートコースと比べると同じ時間でも料金が二倍近くまで跳ね上がる。そりゃ営業的にはそっちを選んでもらった方がありがたいだろうなと苦笑いする。本当に、正直すぎる。
デートとヘルスの間に、添い寝コースというのもある。そちらは軽いキスまでで、いわゆる本番行為は出来ないようだ。よく見たら、デートコースのNG行為の欄にはキスと書いてある。頬にキスするのはセーフのようだが、耳はセーフなのだろうか。指摘したら彼女は『アウトとも書いてないですよね』くらいは言いそうだ。ヘラヘラ笑いながら。
さらに調べていくと、禁止事項の欄にはしっかりと、付き纏い行為やプライベートの詮索行為を禁止すると書いてある。やはり、本気で好きになってしまう客も多いのだろう。他のキャストは分からないが、彼女は客から恋愛感情を抱かれることに慣れていそうだなと苦笑いする。『営業ですから』と何度言われたことやら。そのくせ『次回はヘルスコースで』などと誘惑してくる。その誘いに乗ったら最後だと薄々気付いていながら、私は電話をかけてしまった。
「ヘルスコース一時間。指名はリクさんでお願いします」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます