第15話 母娘寝具

 いつも少しだけ大人のお姉さんのような色香を振りまくアンファが、この時は珍しく激しく動揺した様子を見せる。

 何事かと、神人たちが首を傾げると、アンファは立ち上がって慌てたように母から枕を取り、それを神人へと手渡す。


「坊や様! お、お願いします、こ、この枕に一回触ってみてください!」


 枕に触れる。それだけのことが何なのかと弥美は余計に意味が分からずに首を傾げるが、神人や母、そしてブラシィとルゥはその言葉でハッとした。


「ま、まさか……これ」


 神人が尋ねると、アンファが頷いた。

 そう、これはただの枕ではないと神人たちは察した。

 そして神人がゆっくりとその枕に手を伸ばすと……


「「「ッ!!???」」」

「な、なんなの!?」


 突如、枕が神々しく発光した。

 あまりにも突然のことで、弥美は声を荒げるが、神人たちにとってはそれはもう慣れたもの。

 そしてその眩い光はやがて枕を徐々に形を変化させ、人の姿へとなっていく。



「ぷはっーーーーー! じゅわっち! やったもんね~! ついについに~、むふふふふ~、もとのすがたにもどっちゃったもんね~! ブイブイブーイ!」


「「「「ッッ!!??」」」」



 そう、道具が人の姿になる。それは、かつてブラシィたちもそうだった。


「ま、枕の神様だったのか!?」


 そう。そこに居たのは枕の神。


「むふ~、えへへへ~、ハジメマシテだね♪ おにーちゃんが、『クーラ』のあるじさまになる、ヤオヨロズのひとなんだね♪」


 光の中から現れたニコニコと笑う明るい神。

 とても小柄で、ルゥよりも小さな姿で、神人の腰ぐらいの高さしかない。

 白いワンピースに麦わら帽子という格好がよけいに幼さを感じさせる。


「な、なんですって!? こ、これが……神人くんの力……」

「まぁ、かわいらしい神様ね♪」

「なんと……枕の神だったとは……」

「ええ、しかも……この子……」


 そして、その神様を見た瞬間、一同が思わずある人物に視線を向けた。

 枕の神様の容姿。麦わら帽子の下から伸びる、腰元まである長さの紫色の髪。

 そしてその表情。それはある人物に酷似している。


「似ている……アンファに……」


 そう。その姿は、時折部屋で神人のオ●ニーを手伝う時に、アンファが趣向を変えるために合法幼女の姿になって神人と絡むときと瓜二つなのである。

 そして更に……



「きょうから、まいにちいっしょにねよーね、あるじさま! ひざまくらでも、だきまくらでもなんでもすきにねかせてあげるよ?」


「へっ、あ、あのっ!?」


「クーラはすごいんだよ~? だっていままでだれにもつかわれたことのない、しんぴんまくらだよ? しんぴんカミのプニプニロリまくらなんだよ~♡」



 幼い姿でこの危険すぎるいやらしい微笑みもまたアンファと酷似していた。

 思わずゾクッとして後ずさりする神人。

 すると……


「あのね、クーラは―――」

「クーラっ!!」

「ッ!!??」


 そのとき、アンファが『クーラ』と大声で叫んだ。

 ニコニコ笑っていた枕がビクッと驚いたように振り返ってアンファを見ると、枕も口をパクパクさせながら……



「……おかーさん……」


「「「えっっ!!??」」」



 クーラと呼ばれた枕がそう呟いた時、神人、母、弥美は驚愕の表情を浮かべ……


「おかーさんっ!」

「クーラ! 嗚呼、私のクーラ! クーラっ、元気だった?」

「うんっ! おかーさんだ……おかーさんの匂い~~~!」


 涙を流しながら互いを抱き合うアンファとクーラ。


「あの子……アンファの……」


 まさかの母娘という事実に言葉を失う神人たちにブラシィたちが耳打ちする。



「我々神も種類によっては、分裂するような形で子を成すことが出来るのだ。アンファもそのタイプの神。そしてあの子は、かつて神界でアンファと分裂し、枕の神となったクーラだ……」


「し、知らなかった……アンファって俺と初めて●ナニーしたって言ってたけど、子供は居たんだ……そういえば、前もそんなことを……」


「ふふふ、アンファは子供は居るが独身だ。少しホッとしたか? 御子様」


「え、えええ? そ、そんなことは……」



 クーラは誰かと愛し合って出来た子供ではないが、まぎれもなくアンファの子供。


「じゃあ、きょうから、おかーさんといっしょにすめるね!」

「ええ、そうね。嗚呼、嬉しいわ……これからはずっと一緒よ、クーラ」

「うん! まいにちあるじさまをグッスリねかせてあげよーね!」

「ええ!」


 思わぬ出会いに神人たちもどう言っていいか分からず、ただ今はこの再会をそっとしておこうと、誰も余計な口は挟まなかった。

 すると……


「あっ! …………ふふふふふ」


 感動の涙を流していたアンファだったが、突如何を思ったのか怪しく笑った。

 そして……


「ふふふふふ、ブラシィ。ルゥ。もう大丈夫よ。坊や様はもうオナ●ーだけで生きていけるわ」


 突如自信満々に笑いだすアンファ。その様子と発言に弥美の目じりが僅かに動く。

 するとアンファはクーラを抱きしめながら……


「だって……今日から布団と枕……母と娘の強力タッグ……母娘寝具オナ●ーという最上級の●ナニーを味あわせてあげられるのですから」


 禁忌の誘いをアンファは口にした。



「んもう、神人くん! それにアンファちゃんも、そういうのは……せめて私たちが留守の時とかにって言ってるのに! ……でも、あの小さかった神人くんがもう立派な男の子になっちゃったのね……息子を持つ母として感慨深い気持ちになっちゃうわ……息子の自慰を見ちゃうなんて……」


「ちょっと……恋人の目の前で……ここに君にヴァージンを今すぐにでも捧げても悔いなしどころかむしろ望むところな私を差し置いて、よくもマ●ターベーションをしようだなんて思うわね!」



 部屋に戻るどころか、リビングのまま。既に準備万端とばかりに神人は衣服を剥ぎ取られ、床の上にはアンファとクーラのワンピースや下着と一緒に積み重ねられていた。


「ほらほら~、あるじさま~クーラのぷにぷにひざまくら、きもちーでしょ♡」

「ふふふふ、坊や様ったらいつも以上に私の肉布団に興奮されていますね。いじめたくなります♡」

「ふふ~ん、あるじさま、いっつもおかーさんとおねんねしてたんだ~」

「ええ、そうなのよ、クーラ。でも、今日からはクーラも一緒にしないとダメよ?」

「はーい! よろしくねー、あるじさま♡ すきなだけクーラをつかっていーからね? したいでしょー? あ、なさけない顔してるー、わーい、あるじさまの、ざーっこざっこざっこ♪」


 そんな二人に、母の言葉や、弥美の怒りは聞こえない。


「なな、なんで!? なんでだよ!? なんで俺、かーさんや、弥美さんの前で――――――――」















「……息子の自慰を……最初から最後まで初めて見ちゃった……」

「……私としたことが……止めるどころか見入ってしまったわ。でも……恋人のマスターベー●●ンを見てしまった以上、私も神人くんに見せないと、フェアじゃないわね……」


 そんな状況の中、手で顔を隠しながらもバッチリと指の隙間から一部始終を見て照れる母。

 頭を抱えて項垂れる弥美。

 そして……


「な……なぁ、ルゥよ……」

「なにかしら……」


 複雑そうな表情で立ち尽くすブラシィとルゥ。

 二人は一部始終を見終えて思ったのは……



「最初は御子様をセックスよりもオナ●ー好きにするようにと思っていたが……このままでは……私たちを使うよりも、御子様はベッドでオ●ニーばかりするのではないか?」


「……き、奇遇じゃない……私も今、同じことを思ったわ。もしあんなのを夜から朝までの睡眠時間にやられたら……私を使ってオナ●ーしなくなるんじゃ……」



 自分を使って神人がオ●ニーをしなくなる。それは自分自身の存在意義にも関わる問題であり、弥美とは違ってこれはこれでブラシィとルゥにとっての死活問題になるのではないかと二人は恐れた。

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