第2話 ごしごしタオルのヒロイン
「ただいま~」
弥美の屋敷に比べればどこまでも平凡な店を一階に構えた家。
看板には、『リサイクルの八百万』とデカデカと書かれている。
既にシャッターの閉まった店の脇を通り路地裏に入ると、自宅の玄関がある。
「ただいまー」
家のドアを開けたら、奥から母親の声が聞こえた。
「おかえりなさーい。ご飯食べたんでしょ?」
「うん」
「じゃあ、お風呂沸いてるから早く入りなさい。神人くんが遅いから、『ルゥちゃん』が待ちくたびれてるわよ。そのまま直行しなさ~い」
「は、は~~~い」
母の言葉を受けて、二階のある自室ではなく一階のトイレの隣にある風呂場へ向かう。
狭い脱衣所には、洗濯機と洗濯カゴが設置されている。
しかし、脱衣所に居るのはそれだけでなく……
「あら、このダニ……じゃなかった、ご主人様。随分と不潔になって帰ってきたじゃない」
オレンジの髪をした、ロールがかったビッグテールの小柄な女の子が居た。
小柄な神人よりも小さな体だが、真っ白い手足、短いホットパンツ、そしてボーダーのタンクトップから見える肩が色気を出している。
そして、何よりも、嫌悪感丸出しで神人のことを、汚物を見るかのように見下すその態度と目つきは、神人をいつも後ずさりさせる。
「た、ただいま、ルゥ」
「ただいまじゃないでしょう! まったく、こんな下品で不潔な体を、この神たる私に洗わせようと言うのだから、あんたも随分と偉くなったものじゃない。ほんと、臭い汚い耐えられない! ちょっと、いい加減にしなさい! 妊娠したらどうする気!」
「ひうっ!」
ルゥという名の少女は、神人の学ランの上着を脱がして、Yシャツの上から胸を摘まんだ。
「汚らわしい。そして私の体を今日も穢すのね、あんたは」
「る、るう、だ、だめだよ、母さんに声が……」
「自分の運命をこれほど呪ったことはないわ。あんたの体をツルツルピカピカにしてやるのが私の生涯の使命だなんて、本当に可哀想で不幸な神だわ、私は」
神人のYシャツのボタンにルゥは手を掛ける。少しずつ露わになっていく肌に、妖しくなぞるように指を這わせる。
そして、微笑みながら、ルゥ自身も自分のタンクトップやホットパンツに手をかける。
「ふふふふ、あらあら。だめだだめだと言いながら、大して抵抗もしないでやる気満々なんて、本当にあんたは最低のクズね」
衣擦れと共に一枚一枚焦らすように脱ぎ捨てられ、露わになるルゥの体。
神人は照れたように顔を逸らそうとするも、興奮で呼吸の乱れは止められない。
そんな神人の様子に、ルゥはニタリと笑みを浮かべて舌なめずりする。
「さあ、早く来なさいよ。この、『ボディタオル』の神様である『ルゥ』が、この全身を使ってあんたの穢れを落としてあげるんだから、泣いて喜びなさいよ、このゴキブ……御主人様!」
その瞬間、ルゥの体から白い泡が浮かび上がってくる。
それが、ルゥの『能力』である。
全身から泡を生み出す力。
それで身体を現れれば、全身の穢れは容易に落とせる。
「ふふふ……レッツ・ウォッシュ♪」
「う、うん、お、御願いします」
服を全部脱ぎ、恥ずかしそうに『前』だけ両手で隠し、中腰になる神人。
そんな神人の手を引っ張り、風呂場へと連れて行ったルゥは、すぐに神人の背後に回り込んで、その全身を擦り付けた。
「さあ、まずは背中からよ。ゴシゴシしてあげるわ」
ゴシゴシと言いながらも、ルゥは神人に触れるか触れないかの距離でくすぐる様に神人の背中を擦った。
そのもどかしさに、神人はビクッと体を震わせて身を捩った、
「はうっ、く、くすぐった、ね、ねえ、ルゥ、もうちょっと強くお願いぃ」
「あら、命令? この私に? もっと強くしてください、ルゥ様でしょ? この人間童貞!」
「ひうっ! や、だ、だめだって!」
弱々しく声を上げてねだる神人の様子に、ルゥは口元を三日月のように鋭く吊り上がらせた。
「ふふ、ほら、壁に両手をついて足を広げなさいよ、御主人様」
「えっ? えっ? で、でも」
「ほら、早くしなさいよ、このノロマ!」
「うひっ!?」
まるで生殺与奪を握られているような状況で、神人に逆らう力も威厳もなく、ただ言われた通りに両手を壁に突き、両足を少しずつ開いていく。
「あーはっはっは、情けない! 情けないわね、御主人様! それが神を使役した我が主とはねぇ! あ~あ、臭いわ、汚いわ! なんて穢らわしいのかしら!」
「ひ、っ、だ、らったら、離れてよぉ!」
「離れる? 何で? むしろくっつかないとでしょう? これは洗浄よ? むしろ汚いのだから入念に洗浄しないとダメでしょう? ここはお風呂で、私はボディタオルの神! ならば、神の役目を全うするまでよ!」
全身をプルプル震わせる神人だが、ルゥは決して容赦はしない。
風呂場を埋め尽くすほどの泡が、二人を包み込む。
「ふひ、ひゃ、く、くすぐった、ひひいい!」
「あらあら、そんな声を出しちゃって。体を洗うだけで何故そんな声が漏れるのかしら? ご主人様♪」
そんな神人の風呂は朝と夜の二回、強制的に入らされる。
大体、一回一時間ぐらい、毎日念入りに体を洗わされる。
それが神人の日課。
「ふふふふ、後ろは綺麗になったとして、やはり前はもっと入念に洗わないとダメよね」
「ッ!?」
「さぁ、まだまだ、レッツ・ウォッシュ♥」
神人とルゥの嬌声が風呂場に大きく響き渡る。
しかし、その声を聞きつけ、誰かが駆けつけることなどない。
何故なら、これが神人の日課の入浴だからである。
毎朝毎晩、これが神人の入浴なのである。
夜は特に濃厚になり、風呂から上がった時は、肌もツヤツヤテカテカピカピカになっているものの、神人は脱力しきった状態になる。
しかし、神人の夜はそれだけでは終わらない。
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