第93話

ロレッタは毎日行っている朝の散歩を行っていた。


するとロレッタを見かけた子供が笑顔で駆け寄ってくる。


「ロレッタさま~!見てください私の育てた野菜!」


近くの家に住む女子がロレッタを見かけて野菜を片手に駆け寄ってきた。


「わぁ~すごい!これはリリちゃんが育てたの?」


「うん!お母さんとお父さんとお兄ちゃんと育てたの!」


自慢げに野菜を掲げた。


「よかったらロレッタ様もらって下さい。この子ロレッタ様に差し上げたいと朝から待っていたのです」


リリのお母さんが笑顔で野菜を差し出した。


「いいんですか?」


「もちろんです!ここまでこの場所が住めるようになったのはロレッタ様やフレッド様のおかげですから」


ロレッタはありがとうとお礼を言って野菜を受け取った。


たくさんの野菜をもらって歩いていると後ろから足音が近づいてくる。


そしてロレッタの持っていた野菜のカゴを奪うように持った。


「ロレッタ、こんな重いものを一人で持つな」


そこには心配顔のフレッドが慌てた様子で駆け寄ってきていた。


「ふふ、フレッド様ありがとうございます」


ロレッタが歩き出すとフレッドも並ぶように二人で歩き出す。


「だいたいなぜ待っていない、出かける時は私もついて行くと言ってあるだろ」


「ですがフレッド様はお忙しい身ですから、それにこの周りを少し歩くだけですよ」


「それでもだ!」


「わかりました」


ロレッタは怒られているのにニコニコと笑いフレッドの手を握りしめる。


すると眉を歪めていたフレッドはみるみると機嫌が戻っていった。


二人で平和な町を見ながら野原の方へと歩いて行く。


「ここもようやく落ち着いて来ましたね」


「ああ、来た時はどうなる事かと思ったが…何とかなったな」


国と呼ぶには程遠いがアルゴラ国の力も借り、この土地の領主としてフレッドは落ち着いていた。


「ジョン様はどちらに?また勝手に出てきたりしてないですよね?」


ロレッタはフレッドの顔を覗き込むとサッと目線をそらされる。


外交する時などポーカーフェイスでやり込めるのに自分の前ではわかりやすいフレッドにクスリと笑いが込み上げる。


「フレッド様はわかりやすいですね、では早く帰りましょうか?きっと今頃ジョン様にシド様が探していますよ」


「大丈夫だ、あいつら人の事を使い過ぎる。ロレッタとの時間が全然取れん。少しくらい私がいなくても問題ない」


フレッドは二人の顔を思い浮かべたのか苦々しげにしている。


そして戻る気はないようでロレッタの腰にそっと手を添えて先へと促す。


「今はあいつらの事は忘れて私に集中してくれ」


「はい」


ロレッタは幸せそうにハニカミフレッドの肩に頭を寄せた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る