第92話

「後悔とは?」


「私の国に来たことだ…この国に居れば良かったと今なら思っているか?」


フレッドの言葉にロレッタは一瞬驚きその顔を崩して笑った。


「いいえ、アルゴラ国に行ったからこそ…フレッド様に会えたからこそ、今それに気がつけたのです」


ロレッタはフレッドの手をギュッと握りしめてその目を見つめる。


「ロレッタ…」


フレッドはよかったと肩の力が抜ける。

可愛いロレッタの腰に手を回して近づけようとした。


「おっほん…」


見つめ合う二人に咳払いが聞こえた。


見るとジョンが困った顔を横に向けてソワソワしていた。


「す、すみません」


ロレッタは慌ててフレッドの胸を軽く押して離れた。


ジョンめ…


やはり何処までも邪魔をする…が確かに今はそんなことをしてる場合ではなかった。


「すまなかった、ロレッタ今はシドやエミリーのそばにいてくれ」


「はい、お仕事の邪魔をして申し訳ありませんでした」


ロレッタは頬を染めながらサッと部屋を出ていった。


その姿をジョンは目で追っていた。


「ロレッタに何か?」


フレッドはジョンに問いかける。


「いえ、ロレッタ様があんなにも感情豊かで表情を変える方だとは知りませんでした…」


「そうか?ロレッタはよくあんな顔をしているぞ」


フレッドは疑問に思い首を傾げる。


「それはフレッド様といるからなんでしょうね…」


ジョンの言葉に悪気はしないフレッドだった。



フレッドはジョンから今のコスリガの現状をきいて頭を抱える。


思っていた以上に深刻な状態だった。


「これは…国と言うよりは領地として徐々に国にしていくしか無さそうだな」


「肝心の人が不足しております。まずは住みやすく安全な場所を作るしかありませんね」


「金はアルゴラから支援してもらえるが…いつまでも貰えるわけではない、とりあえずは食物の確保からだな…」


「兵士達は剣を置いて桑を持て、農民から兵士になった者がいたな。そいつに教えを乞う」


フレッドはシドから国から持ってきた植物の種や苗を用意させ、畑を作ることにする。


兵士を半分にわけで半数はそのまま町の周りの警護を残りは畑を作らせた。


そうして徐々に土地を広げて行くことに…兵士達のおかげで治安の良くなったコスリガの噂を聞いてい人が戻ってくるようになってきた。


ジョージとレミリアは首を切れとの声が多かったが、ロレッタがそれを反対した。


「彼らにはこの国を戻す義務があります。蔑んできた人達のありがたみを知るべきです」


一番の被害者のロレッタがそういうのならとコスリガの人達は仕方なく納得した。


ジョージ達は最初は抵抗や悪態をついていたが、その度に鞭で打たれたり食事を抜かれたりして徐々に抵抗する事を諦めていた。


レミリアだけはそんな生活に耐えられないと…自らの舌を切って自害した。


知らせを受けたロレッタは悲しみ妹のために涙を流した。


「次に生まれてくるときは…仲の良い姉妹になりましょう…」


レミリアの墓は郊外の人気のない場所にひっそりと建てた。


ロレッタは手を合わせてそんなことを願う。


「ロレッタ、自分を責めては駄目だぞ」


フレッドは心配になりロレッタにそう声をかける。


「もちろん、わかっております」


そこには強くなったロレッタの姿があった。

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