第91話

「私は、ロレッタ様へその事を報告致しました…するとロレッタ様は知っていたのか悲しそうに微笑まれるだけで全てを諦めているように感じました」


「あの二人なら隠す気などないだろう、ロレッタの前でも平気でいたんだろうな」


その情景が目に浮かぶ。

改めてあの二人に憎悪がわいた。


「私はロレッタ様へと進言した事で地方へと飛ばされました…そして国が大変な事になっていると戻された時にはロレッタ様は隣国へと売られて亡くなったと…その間にあの妹は正式な婚約者となっていました」


だからロレッタ様が助かっていてよかったとジョンは本当に嬉しそうにする。


しかしその優しさにフレッドの胸はざわついた。


「やはり、そんなにロレッタの事を考えていると言うことはロレッタを思う気持ちがあったのでは?」


どうも納得出来ずにいると、ジョンは少し驚いた顔をして笑った。


「フレッド様の思うような事はありません、私の気持ちはあの国で良心を持っていたロレッタ様をお救い出来なかった後悔とこれは親のような気持ちでしょうか…」


「親?」


フレッドは眉をひそめた。


「フレッド様、私には愛する妻と子がおります。ですからロレッタ様にそのような気持ちを持ったことはございません」


ジョンは笑って首をふる。


「しかし、歳はそれほど離れてはいないだろう?それにロレッタは可愛いからな…」


「ロレッタ様に初めてお会いした時ぐらいにちょうど私の娘も生まれたのです。ですから本当に娘の様に幸せになって欲しいと思っていました」


ジョンはニコニコと笑いながら説明する。


「何を笑っている、そんなにおかしいか…一人の女に振り回される無様な男の姿が…」


フレッドは思わず顔を横に逸らした。


「いえ、その逆です。私は今とても嬉しいのです…ロレッタ様をそこまで思ってくださる方がロレッタ様の隣にいてくださる事に…私がこのような事を言う立場ではございませんが、どうかロレッタ様をずっと大切になさってください」


頭を下げるジョンに当たり前だとフレッドは思った。


「フレッド様…」


話をしているとロレッタが心配そうに扉をノックして中の様子をうかがう。


「ああ、ロレッタ。外は大丈夫なのか?」


扉に近づくと手を取って中へと連れてくる。


「はい、皆様私の事を知っているようで顔を見るなり泣いたり、喜んだり…時には拝んだりしてくれました」


その時の事を思い出して少し微笑む。


「私はこの国に居場所などないと思っていましたが…自分を殻に閉じ込め見えていなかったのですね」


後悔するように顔をしかめた。


その表情に不安になる。


「後悔しているか?」


フレッドはロレッタに問いかけた。

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