第83話
その何日か後、ロレッタとフレッドはコスリガへと向かう為に王宮を後にしていた。
フレッド様は色んな方に別れの挨拶をするのにロレッタを一緒に連れて回った。
そしてこの国にはもう戻らないという意志をその挨拶で感じていた。
「フレッド様、本当によろしかったのですか?」
ロレッタは今になって心配になる。
自分の為にフレッドは祖国に帰ることを諦めているのでは無いかと感じていた。
「別になんて事はない、君といる場所が私達の国になり、祖国になるんだ。これからは皆で頑張っていこう」
フレッドは不安そうな顔のロレッタの肩を持つとギュッとそばに寄せた。
「はい」
ロレッタは頼もしいフレッドの肩に頭を寄せると…
「お二人共!私達が居ることをお忘れなく!」
後ろから咳払いと共にシドが声をかけてきた。
「シド様、ロレッタ様が勇気をだしたのに邪魔をしないで下さいませ」
エミリーさんがシドの空気の読まなさに呆れてため息をつく。
「これから元コスリガに行くって言うのになんだか旅行気分のようですね」
「そんなことありません!私もフレッド様も気を引き締めています」
ロレッタは慌てて振り返った。
「王子も向こうに着いたらすぐに反乱軍と交渉ですよ」
「そうだな、でもこちらにはあれがあるからな」
フレッドは後ろから続く一台の馬車を見つめる。
そこにはジョージとレミリアが収容されていた。
「あいつらは相変わらずか?」
フレッドはロレッタから離れるとシドと二人になる。
ロレッタを見るとエミリーが気を利かせて二人から離そうとしていた。
「エミリーさん、大丈夫です。それにフレッド様もそんなに気を使わないでください。国に戻れば彼らを引き渡さないといけないことはわかっています。私にずっと気を使うのは大変だと思いますよ」
ロレッタは苦笑する。
「だが…実の妹の事だ。嫌なら見ていなくてもいいんだぞ」
フレッドが心配そうに見つめる。
「これから私もフレッド様のお力になりたいのです。この程度で悲しんでいては上には立てませんよね」
「そうだな、ロレッタにはずっと私の隣で支えて欲しい。だからすまない…強くなってくれ」
「はい!」
ロレッタはフレッドから守られるのではなく、隣に並んで欲しいと言われ、嬉しくて目をうるませた。
これからの長い道のりに共に歩いてくれる存在に感謝して二人はそっと手を握りあった。
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