第74話
「フレッド様、私いい子にしますからこれを取って下さいませんか?」
レミリアはうかがうように手枷を付けられた両手をフレッドに差し出した。
「何故だ?」
「だって、フレッド様やお姉様に抱きつきたいのにこれがあったら邪魔ですから…」
眉を下げて悲しそうな顔を見せる。
フレッドはそんな無邪気なレミリアに優しく笑って語りかけた。
「何か勘違いをしてるみたいだが、私はお前を迎える気は毛頭ない」
言葉とは裏腹に笑っている姿にレミリアは背筋がゾクリとした。
「そ、そんなお姉様からも何か言ってください!私は可愛い妹ですよ!」
レミリアの必死な声にロレッタは顔を曇らせた。
「ねぇレミリア、それよりもあなたはジョージと添い遂げると誓ったのではないの?何故そんなに簡単に切り捨てられるの?」
「だって…付き合ってみたらそんなにいいもんじゃなかったんだもん。お姉様といる時にはすごくよく見えたけど…でももうしません!お姉様達の言う事を聞きますから!」
レミリアは必死にロレッタに頭を下げた。
ロレッタはフレッドの顔をチラッとうかがうと、「君の好きにしたらいい」とフレッドはこくりと頷いた。
ロレッタは落ち着いて瞳を閉じると、フーっと息を吐いた。
そして覚悟を決めて目を開けてレミリアを見つめた。
「レミリア、コスリガ国の王族としてキチンと覚悟を決めるべきです」
「お、お姉様。それってどういう事?」
レミリアは不安そうに聞き返す。
「ジョージ王子と婚約をするということはそういう覚悟も一緒にすることです。彼が落ちたのなら婚約者として、妻として、彼と共にいきなさい」
「そ、それってジョージと死ねって事?酷い!よく実の妹にそんな事が言えたわね!フレッド様聞きました!?お姉様はこういう非情な人なんです!」
レミリアはフレッドに助けを求めようとする。
「私はロレッタの意見に賛成だ、妻に貰うならそういう覚悟の女性を貰いたい。コロコロと他の男に乗り移る女など信用も出来ないからな」
冷たく言い放つとレミリアは苦々しい顔をする。
「な、何よ…」
二人に見つめられてレミリアはたじろいだ。
「か弱い女の子を虐めて楽しいですか…本当に酷い人達だわ!私に死ねって言うのね!」
周りに聞こえるように大きな声をだす。
そして微笑みながら状況を眺めていた国王に向かって膝まづいた。
「国王様、ご覧になったようにあの姉は非情な方です。私が今こんな目にあっているのもあの姉のせいなのです。本来なら私がこの国にくるべきでした!どうか今からでも姉と変えて頂けませんでしょうか」
「この女…無礼者!」
兵士達はレミリアの傍若無人な態度に取り抑えようとするが、国王がそっとそれを止めた。
「いやはや、聞いてはいたが凄い子だな」
国王は笑ってレミリアを見て笑った。
国王の笑顔にレミリアは希望の光が見えたかのように顔を輝かせる。
「では!?」
レミリアが喜び立ち上がると…
「お前がこの国な来なかった事、ロレッタ嬢を代わりに寄越した事だけは褒めて遣わす」
国王がそう言うと、スッと笑っていた顔が真顔になった。
「え?」
なんだか怪しい雲行きにレミリアは笑顔が消えていった。
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