第72話

ロレッタはフレッドを見上げると包み込むような笑顔で頷く。


その温もりと笑顔に勇気をもらった。


グッとフレッドの手を握りしめるとジョージとレミリアを見つめる。


「いいえ、私はあなた達に騙されてコスリガ国に売られました。本来ならあなた、レミリアがこの国に来るはずだったのをジョージ、あなたがレミリアと離れたくないと私を気絶させて送り込んだのです」


「コイツ…」


ジョージはワナワナと拳を震わせてロレッタを睨みつける。


「いつからそんな口を聞くようになったんだ!」


襲いかかろうとしてくるとフレッドがロレッタを庇い前に立ち塞がる。


そこを衛兵が難なく押さえつけた。


「ジョージ…いや、もう名前を呼ぶのも不快だ。そこの男をすぐに捕らえろ、アルゴラの反乱軍にすぐに送り返せ」


「「ハッ!」」


衛兵が連れていこうとすると…怯えるレミリアを見つめる。


「こちらの女はどうしますか?」


彼女を指さした。


「わ、私は…フレッド様、先程聞いた通りです。本来なら私がこの国に来るはずでした、今お姉様がいる場所は本当なら私がいた場所…お願いですどうかお姉様と一緒におそばに置いてください」


レミリアは泣きながらフレッドに近づこうとするが衛兵に止められた。


「離して!私はあの方のそばに…」


「レミリア…あなたジョージのことはいいの?愛していたんじゃないの?」


ロレッタは悲しそうな顔でレミリアを見つめる。


「やめて! ジョージなんてどうでもいい!お姉様、いえあなたにそんな憐れんだ顔をされたくない!本当なら私がその方に愛されていたのに…」


レミリアはロレッタを睨みつける。


「もう姉とも呼んでくれないのね」


レミリアはロレッタを無視してフレッドを見つめる。


「フレッド様、何が駄目だったのですか?私がその女の何に劣ると?」


レミリアはフレッドに向かって自分の自慢の胸を突き出した。


フレッドは心底軽蔑した顔をレミリアに向ける。


「お前は勘違いをしている」


フレッドはレミリアとロレッタを見比べる。


「お前とロレッタを比べるなんてとんでもない。そんな価値、お前には無い」


ハッキリと言い切った。


「なっ!どう見たって私の方が綺麗で可愛いし、性格だってそんな暗い女よりいいに決まってる!」


「お前が可愛い?そんな馬鹿なこと誰が言ったんだ?」


「ジョージだって、他にも付き合った人は皆…」


「そりゃ見る目が無いやつとばかり付き合ったんだな。言っとくがお前を渡せと言ったのは国の為だ。お前には女としてはこれっぽっちも興味無い」


レミリアは信じられないと口をパクパクとさせる。


「まぁお前が来ないおかげでロレッタが来てくれた…その事だけは感謝しよう」


そう言ってフレッドはロレッタの手を優しく掴んで愛おしそうに撫でる。


「そんな女に何が出来るのよ…」


エミリアは悔しそうに歯を食いしばる。


「そうだ、そんな何も出来ないやつ」


ジョージも頷く。


「あはは!本当にお前は馬鹿だったな。ロレッタの魅力に気づかないで何も手を出さなかったなんて」


「魅力?」


ジョージはロレッタを見つめる。


「フレッド様!」


その顔は恥ずかしそうに赤く染まっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る