第65話

「シド様、いきなりどうしたんですか?」


急に真面目な感じになったシドに戸惑ってしまう。

そんなロレッタにシドは苦笑する。


「ロレッタ様には感謝しているんです。フレッド様がロレッタ様が来てから毎日生き生きしておりますから」


シド様が珍しく穏やかに笑った。


「機嫌がいいとからかいがいがあるんですよね」


「えっシド様今なんと?」


「いや、今のは内密に・・・・・・冗談ですから」


シドが笑って誤魔化した。


ロレッタはそんな様子にクスッと笑う。

二人の仲良く言い合う姿が目に浮かんだ。


「ですから、フレッド様の事を信じて下さい。何があろうとあの人ロレッタ様にベタ惚れですからね」


茶化すように言うくせに、顔は真剣なものだった。


しかしロレッタはその言葉に引いた赤みがまたボワッとぶり返した。



シド様は用がある言うので別れて王の間へと向かうと、扉の護衛の兵士に隣の部屋で少し待つように言われる。


どうやら国王からそのように指示があったらしい。


「すみません、ロレッタ様他にも来る方が居そうなのでこちらでしばらくお待ちください」


「分かりました」


シドさんが自分と別れて用があると言っていた。

きっとその人の元にシドさんは向かったのだろう。


忙しそうで大変だな・・・・・・

後で、フレッド様と一緒にお茶でも出来たらいいなぁ


ロレッタはみんなで飲むお茶を楽しみにしながら時間を過ごした。




シドは重い足取りでジョージ達の元に向かった。


扉の前に立つと中から二人の声が漏れていた。



―――



「んー、いまいちな料理だな。これは後でシェフに文句言わないと」


「それよりもクビにした方がよろしいんじゃないですか?」


「それもそうだな」


―――


聞こえてくる会話に扉の前に立たせておいた兵士を見つめる。


「ずっとこんな感じですか?」


「はい、ずっと愚痴か文句しか言ってませんよ。さらに酷いのは女の方ですね。全部悪い事は男の方に誘導してやらせています」


シドは頭が痛くなる。


これを国王とロレッタ様の前に連れていくのか・・・・・・と


「彼らを王の間に連れていきます。何かしないように厳重に拘束しておいてください」


「はい!喜んで!」


兵士は顔を輝かせて部屋へと突入して行った。


「何をする!こんな事をしていいと思っているのか!」


「酷いです・・・・・・私まで、か弱い私が何かするとお思いですか?お願いです!フレッド様を呼んでください、彼ならこれを見てきっと怒ると思いますよ」


中から聞こえる声にシドは顔を顰めて覗き込んだ。


「レミリアさん、今のはどういう事ですか?」


「あら!シド様・・・・・・そんなに怒らないでください。シド様もとても素敵だと思っていますが、私フレッド様から好意を寄せられているんです」


エミリアはぽっと頬を赤らめた。


「「「は?」」」


レミリアの言葉にシドと兵士は一瞬呆気に取られて思考も動作も停止した。

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