第15話 遠征

何か書こうとしたけど書く内容を忘れた。

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「遠征?」

「そう、遠征。複数のパーティで固まりながらより深い層に潜る。数日迷宮から帰って来れなくなるが、問題無いか?」

「私は大丈夫だけど」


C級になり、より報酬の高い依頼が受けることになった俺たちの収入は倍するほどになった。しかし、そんな俺たちには別の問題があった。


それは、物資だ。これまでは一日の間で行って戻ってこれる深さでしか活動したことが無かったため食料も要らなかったし、討伐した魔物も簡単に持ち帰ってくることができた。


当たり前のことだが深い層になるとそれが難しくなる。

一層降りるごとに層全体の広さが倍になるのだ。

第一層が4キロ程度で第二層が8キロ、第三層が16キロと広がっている。

第四層まで向かうなら28キロ、しかもこれは最短での話だ。

その上に迷宮内部の環境も過酷になる。

森林のエリアや、砂漠、果ては氷山まで現れる。


途中の補給なしではとても到達は不可能。

だからこそ『空間収納ストレージ』スキル持ちの存在が必須となる。

空間収納ストレージ』は人間にとっては2、3人に1人が持つ程度のスキルでそれ程珍しく無い。だが、パーティに1人は欲しいスキルだ。

空間収納ストレージ』を持った奴隷を買えば問題は解決するが、それは幾つかの理由でしたくない。


 一つ目は奴隷が無条件に信用できる存在でない事。奴隷は魔術具によってその行動を制限されるというが、その魔術具自体に盗聴などがなされていた場合、詰む。


 二つ目は何となく奴隷を使いたく無いからだ。


 三つ目はもっと簡単で確実な方法があるからだ。




 ◆




翌日、俺とフィーネは迷宮の前に立っていた。


「一緒に潜るのって誰?」

「同じC級の冒険者だ。実力の方はC級になったばかりだからそれ程では無い」

「ふぅん、そう」


興味無さそうだ。

予定していた時間に近づいた頃、俺達の元へと近づいてくる冒険者が現れる。


「よお、ゴトー、早いな」

「ああ、今日はたまたまだ、マッキ」


茶髪で人間にしては恵まれた体格の大男。それがマッキだった。

彼は体格を生かした斧使い、バリバリの前衛クラスのリーダーだ。腕っぷしの強さと自身のカリスマによって仲間を率いている。

彼と共に彼のパーティである4人の人間がこちらへとやって来た。

剣士が二人と盾が一人、盗賊が一人という後衛クラスを含まない編成だ。


「おはよう、みんな早いね。ボク達が最後みたいだね、ごめんよ」

「時間通りだ、問題無い」


待ち合わせをしていたもう一つのパーティのリーダー、トリーだ。

彼女は冒険者のパーティとしては珍しいことに弓使いという後衛クラスのリーダーだった。普通に考えると後衛が指揮を取る方が効率が良い気がするが、腕っぷしが重要となる冒険者にとって指揮を取る人間が自分より弱いのは認めがたいらしかった。


その点彼女のパーティは子供の頃からの幼馴染みによって構成されているので彼女が指揮を取ることに不安は無い。


彼女のパーティは、剣と盾を駆使する騎士クラスが二人と、黒魔術師と白魔術師というマッキのパーティとは逆に後衛に偏った編成だった。


もちろん二つのパーティには『空間収納ストレージ』持ちが一人以上いる。



彼らとは、酒場で意気投合し、遠征のためにアライアンスを組むことにした、


俺の見かけからして、冒険者には向いてないのに、それを初めてのアライアンスを組むほどまで信用するのはあまりにも無理があるだろう。

そこで、俺が動かせる人間の中で、素行に問題が無く、C級に上がれそうな者を選んでC級に昇格させた後、記憶を弄らせてもらった。


素行を一々調べたのは、基本的に自分の意思で動いて貰うためだ。

迷宮内で急な戦闘となった時に逐一命令してはいられない。それに俺には迷宮内部の知識が少ない。致命的なミスを防ぐためにも自由意志は必要だった。



「打ち合わせ通り迷宮内では、固まって行動するが基本はパーティ単位で戦闘する、で良いな?」

「夜の見張りは?パーティごとに立てると休憩できないよ?」

「じゃあ二人一組で回すようにしよう、組み合わせはその時にでも決める」

「分け前はパーティ毎に等分、だったなあ」

「そのつもりだ」


当たり前だが冒険者の装備の維持には金が掛かる。

壊れた鎧を買い替えたり、剣を研いだり、人間だから飯だって食うし寝床も必要だ。

心を癒すために娯楽もいる。

そういった維持コストを惜しむと自由意志の方が拒絶を起こすから手を抜くことはできない。面倒だが、全ての経費を差し引いても利益が圧倒的に勝つのだから数の力は侮れない。


初めて・・・の打ち合わせを終え迷宮に潜った。




 ◆




今回の遠征の目標は第四層で狩りをする事だ。

半日かけて第四層に潜り、二日ほど目ぼしい魔物を狩り、同じように半日かけて迷宮を出る、計三日の予定だ。


その道程は予想していたよりもかなり負担の少ないものとなった。


集団で行動している以上フィーネと二人の時よりも魔物が寄ってくるのだが、戦闘は1パーティずつ行っているので実質の負担は3分の1となっている。


この調子だと、第四層でも大丈夫だろうか。

俺は、二人に書かせたステータスを思い浮かべた。



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マッキ Lv16

クラス

 下級斧士

保有スキル

 斧術Lv3

 強力Lv2

 強固Lv2

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トリー Lv16

クラス

 中級弓士

保有スキル

 弓術Lv4

 瞬敏Lv3

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二人はユニークスキルは持っていないらしい。

下手に強いのも困るのでこのくらいで良いのかもしれない。

クラスは自身のレベルと保有しているスキルのレベルによって解放され、神に祈る事で自由に付け替えることができると聞く。


二人のレベルが同じで、マッキの斧術がLv3で下級、トリーの弓術がLv4で中級となっている事からマッキの斧術がLv4になれば彼は中級斧士となれるのだろう。


他のスキルは基礎能力の上昇効果があるらしい。

強力が自身の筋力強化。

強固が防御力強化。

靭魔が魔力強化。

靱心が魔力抵抗の強化。

瞬敏が敏捷性の強化。

レベルで能力全体が強化されるのにその上にさらに強化スキルが存在するのは羨ましい事この上無いな。



俺はこの二人相手であっても勝てるので、レベルで言うと少なくとも20くらいの強さはあると考えて良い。


俺自身の強さを把握するためにも、遠征が終わったらここにいる全員のステータスを覗かせて貰うか。




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なにげに本編でまともなステータスが描写されるのは初めて。

→と思っていたけどソニアのステータスが出てた事にあとで気づいた…

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