第14話 余燼は既に煌々として

 残ったゴブリン達の視点。短め

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 ヒガシの村。


「シンカンサマ、ドロ、ダシタ」

「ご苦労様です。次は、木材の調達と———」


 ゴブリンには珍しく、流暢な丁寧語を喋るのは、神使ゴトーに神官の統括を任された神官長ギョクだった。


 彼はここ数年で言語の扱いが上達していた。

 それは彼がここ数年で話すことが多くなったのもあるが一番は、ゴトーという手本があったのが大きいかもしれない。



 彼は現在、襲撃の直後に村を襲った洪水からの復興を指揮している。



 ゴトー達が、囮兼足止めとして戦ってから三日が経った。

 突然避難してきたゴブリン達をヒガシの村で無理やりに受け入れたがもちろんそのままでは家も、食料もいずれ足りなくなる。

 そのためにも、衣食住のうち、住はすぐさま提供する必要があった。


 それすら濁流に呑み込まれてしまったが一周回ってそれも良かったかもしれない。

 限られたものを取り合って問題が発生するのを防ぐことができたとも言えるからだ。



 まあ、そんなことよりも。



「これから、どうしましょうか」



 旗頭となるべき人物が失われてしまった。

 ギョクとしては彼にはこちらに来て欲しかった。

 力もその不思議な知識も、今後必要となるものだった。


 しかし、危機に襲われた時前に出るからこそ、彼による支配が許されていたとも言える。

 そういう意味でもあの時、戦う以外の選択肢は無かったのだ。



 奇しくも、残ったゴブリンの中心人物は、ギョクとズイク。

 神官長と元狩人長。

 ゴブリンの村ができた頃からの古い顔ぶれだった。


 再びスタートを切るには丁度良いのかもしれない。

 また、少しずつ、積み重ねて行こう。


 そう前向きに心を決めたところで、彼の前に仲間が走り寄ってくる。

 現れたのは先ほど頭に思い浮かべていたズイクだった。


「どうかしましたか?息が上がってますよ」

「ふゥ、ふゥ。ドロのナカからこれガでてきタ」

「!これは」


 ズイクが差し出したのは、ゴブリンの頭蓋だった。

 ただ奇妙なことにその頭蓋スカルは濃い緑色の玉髄に紅い血の様な斑点の浮かんでいる。



 つまりは血石の依代だった。

 それも、神使ゴトーの持っていたものに倍するサイズだった。

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