第12話 一方その頃

 その頃『紺碧の炎』の冒険者5人は、

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「『スラッシュ』!!…っち、こいつも進化種か」


 剣士ルフレイフの武技を自らが持つその剣で受け止めたのは、オークの進化種、オークソードマンだった。

 この魔物は通常のオークよりも大きな体格と剣術を駆使した巧みな攻撃が脅威的な威力だが、ルフレイフにとっては少々手強い魔物と言ったところだった。


 その上に現在は神官アイザックの4つのバフを受けている。

頑強ハードニング』は体表面の硬度を上げる。

筋力強化ストレングス』、『速度強化ラピッド』は文字通り筋力と敏捷性を上げる。

聖鎧ホーリーアーマー』は攻撃を弾く光の鎧が体を覆う。


 アイザックは地神に仕える神官であり、特に防御系の白魔術を得意としている。

 そのため、彼の白魔術レベルに対しては高難度の魔術である『聖鎧ホーリーアーマー』も習得していた。



 趨勢はすぐに決した。自身の手から長剣を取り落としたオークソードマンが剣士の手で切り捨てられた。



「よっ、ほっ、そおい」


 人間としては小さい体格でありながらも、数多くのオーク達を突き、なぎ払い、叩き付け、その命を穿っていくのは槍士のヴィルマン。

 彼もルフレイフと同じく高い槍術のスキルを持ちその体格差を尽く覆す。

 軽い掛け声とともに、オークの足を払い、空中で回転するオークの胸元を貫いた。


「はははは、次」


 そう言う彼の後にはすでに山となったオークの残骸が積もっていた。




「……」


 一方、盾士のトラヴァンは極めて地味な戦いを展開していた。

 相手の棍棒の一撃を受け流し、正面がガラ空きになった瞬間、突進と同時に盾を突き出す。


「…『シールドバッシュ』ボソ」


 呟きとともにオークは正面からそれを受ける。

 まるで闘牛に轢かれたかの様な勢いで空中に血を撒き散らしながら吹っ飛ぶ。


 彼はアイザックの元まで下がると再び、オーク達を睨み付ける。



 彼らの中で最も弱いのは誰か、と言われるとそれは盗賊ティルシーである。

 彼女はオークよりは強いが、それでもオークが入り乱れる乱戦の中で戦い続けられる程タフでは無いし、隠密能力も同レベルの盗賊の中ではそれほどでも無い。


 それではなぜ彼らとパーティを組むことができるのか、それは彼女のスキルにあった。


「そいつ、リーダーよりレベル高いっす」

「!面倒な、…ヴィルマン!!」

「分かった、すぐ行く」



 鑑定系スキル、『レベル察知』。

 それは魂の格であるレベルを感覚的に知ることができるスキルである。

 武術に長けたものであれば、身のこなし等から相手が武術に長けているかどうか分かるかもしれない。

 しかし、相手が魔術士であれば、その立ち居振る舞いだけから力量を察することは難しいだろう。


 彼女のスキルはそういった単純な比較の難しい「強さ」を感覚的に比較することができるのだ。




 残るオークを全て葬り去ったヴィルマンが、一人で持ち堪えるルフレイフの元へ出る。二人はそれぞれ手に持った剣と槍をオークウォリアーへと向けた。


「ブブオオオオオオオオおぉ!!!」


 雄叫びを上げ突進する巨体が二人の間を通り抜ける。

 二人の後には、魔力の尽きて動けない神官アイザックと、その隣にいる盗賊ティルシーがいた。


「なっ、トラヴァン」

「!…コク…」


 オークとアイザック達の間を遮るのは大盾を構えた盾士トラヴァンだった。

 彼の熱意を受けた盾が白く輝きを帯びる。


「『フォートレスシールド』っ」


 ギャリリリリリッッッッ!!と正面から巨大な棍棒がぶつかり削れる音が響く。

 彼の足は地面を深く削りながらその衝撃を受け止める。


「食いやがれ、『スラッシュ』」

「さすが、トラヴァン、…食らえ『スラスト』」


 同時に後ろから両脇腹を斬撃と貫きが襲う。


 完全に勢いを失い回り三方向を囲まれてしまったオークは、その後も暴れ回り人間達が攻撃を続けるが、やがてその背中に深い切り傷を負ってしまい、それが致命傷となった。


 醜い断末魔と共にその体が崩れ落ちる。




「ふぅ」


 血糊を振り払ったルフレイフは、ふと彼の連れてきた冒険者達のことを思い出す。

 結構数の多く、ゴブリンとしては珍しく呪術を使うものがいたが、さすがに冒険者ですらない人間でも簡単に狩れてしまうゴブリンであれば、苦戦はしつつも負けはしないだろう。


 そう思いながら、強く雨の降りしきり視界の悪い中、オークへの迎撃のために少し離れてしまったゴブリンの村へと戻る。




「なっ」




 そこには、数々のゴブリンの死体と、倒れる冒険者達。



 その中で一人立つ、小さな赤鬼オーガの姿だった

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