第4話 歴史とは繰り返す物だなぁ

 完全に魔術、魔法、呪術の設定忘れてました。

 以前に登場した、魔法使い、黒魔法、白魔法を

 魔法使い → 魔術士

 黒魔法 → 黒魔術

 白魔法 → 白魔術

 に訂正しました。


 魔物が使うのが魔法、人間が作ったのが魔術、魔物が作ったのが呪術です。

 魔法は魔物しか使えませんが、魔術、呪術は誰でも使えます。


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 さらに2ヶ月が経った。


 俺は集落の近くに現れた緑のデカい狼を駆除していた。

 名付けるならフォレストウルフといったところか。


 デカい、と言っても普通の狼の1.5倍くらいだ。

 強襲部隊でかかれば問題無い程度の相手だ。


 まあ、それは相手が1匹だったらの話だが。


 こいつらは4~10程度の群れを作るのだ。

 そうなるとゴブリンでは相手できない今回は俺が出ることにした。


「バウッ!!」

「腹がガラ空きだ、ぞ!」


 飛びかかってきた最後のフォレストウルフの懐に潜り込み、下からの貫手で心臓を穿つ。今回は7匹か、まあまあだな。

 右手にまとわりついた血液をピッピと払いネックレスにぶら下げた血石の依代を取り出す。


 髑髏を握りしめると恒例となった呪文を唱える。


「『捧げよ、さすれば与えられん』」


 小さくなっていく黒い渦から肉塊が取り残される。

 ギリ一口サイズ、だな。依代様の気まぐれで同じ獲物でもサイズが違うことがあるのだ。


 血石の依代は何が何でも持ち歩くようにしている。



 ぱく。うまうま。



『あし』『きば』『あし』『あし』『きば』『きば』『きば』



 若干『きば』の方が多いな。『きば』は咬合力とか消化能力に関係している、という予測がついている。

 あまりサバイバル以外の用途が思いつかないので『あし』の方が欲しかったな。




 ◆




 村に帰ったところで、神官長ギョクが俺を見つけて駆け寄って来る。

 彼はゴブリンの中では奇跡的に機転が利くのでほぼほぼ村の政治は任せているのだが、俺の判断を必要とするようなことはだいたい想像が付く。そう人げ…


「シンシサマ、ゴブリンのシュウラクがミツカリマしタ」


 違った。って、


「他にもゴブリンの群れがあるのか」

「ハイ。10ヨリオオク、ココヨリもスクナイカズでス」


 10~200はアバウトすぎるなぁ。



 とりあえず、俺たちより小規模の群れであることは信じて良いってことだな?


 ならば、取れる策は懐柔による群れの緩やかな併合か、武力による支配かの二択だな。

 この群れを支配することになった時と違って、今回は守らなければならないゴブリンがいる。安易な武力行使は、犠牲を産むかもしれない。

 今回は懐柔を目指すことにする。

 もちろん向こうが攻めて来るならばこちらも全力で抵抗するが。


 ギョクを呼び付ける。


「ギョク、今回はお前も出ろ」

「とイウコトは、香ハモッテマイリマすカ?」

「そうだな、規模も考えると10壺はいるな。神官達を連れていく」

「カシコマリマしタ」


 俺とギョク、神官に一人2壺ずつ持って行かせるから5人、それに強襲部隊5人と偵察部隊5人を加えた合計17人で遠征へと出発することにする。


 交渉の際にいざということがあれば俺を置いて逃げることや、その際には狩人の長であり強襲部隊の隊長であるズイクが指揮を執ることを決めておいた。



 目指すは東のゴブリン村である。



 ◆



 途中で浅い川を渡ったり、連れてきた精鋭でも対処できる程度の魔物と遭遇しながら進むこと半日、ついに森の中の開けた土地にぶつかった。


 そこには俺たちと同じような村が存在しており、多くのゴブリンたちが生活していた。


「やあやあ、頼もう」

「グギャ、オマエ、ナンダ」

「ギャ、テキ、テキ」

「オサ、ヨブ、イク」

「ムム!、ナニヤツ」



 おい最後の奴、無駄に教養があるの何なんだ。


 ゴブリン達が騒ぎ出すと村中から武器を持ったゴブリンが出てきて俺たちを包囲し出す。

 ただ、俺たちの様子を見て攻撃の意思がないのを理解した様で、今のところは包囲のみで済んでいる。


 どうやら偉いやつを呼びに行っている様なので待っておく。



 慌てた様子のゴブリンに先導されてやってきたのは、肌の色が普通より薄くデカいゴブリンだった。


 通常ゴブリンの身長は1.2~1.4m程度であるにも関わらずそいつは1.7mは優に超えていた。


「なんの、用ダ」


 のっそりとした動作で俺の前まで来ると、そいつは頭を掻いていた右手を下ろして俺を見下ろす。明らかに距離が近く、その行為が挑発であるのだけは分かった。

 俺は比較的ゴブリンの中では大きい方とは言え1.4mを超える程度だ。


 体格差は小学生と高校生ほどもある。



 俺が率いている精鋭部隊と比べても勝てるだろうし、オークと互角程度の力量はあるだろう。




 しかし、俺よりは弱い。




 少し安心して交渉を進めることにする。


「俺たちは西の村のゴブリンだ、二つの村の間で物を交換できないかと取引したくてやってきた」


 俺は村同士での取引を目的とする1村人を装うことにした。


「食い物には、困っていなイ」

「娯楽にはどうだ?」

「娯楽だト?」



 俺は神官の一人から壺を受け取り、中身を掴み取り手の上でパラパラと弄ぶ。


「これを焚くと、気持ちよくなれるぞ」

「そんなものは、要らなイ」

「安心しろ。今回持ってきた分はただでくれてやる。どんな良いものも体験しないとその良さはわからないから、な。香炉も用意しているからそこも問題はない。」


 相手が何か言う前に理解が遅れる様に追加情報を詰め込む。

 人畜無害な笑みを浮かべる俺だったが、どうやらそれでも信用できないらしい。バカの癖に知恵を働かせやがって。


「もちろん、危険でないことを証明するために、俺たちがその場にいよう。これもゴブリン同士の友好の証だ」


 そんなわけあるか。完全に違法薬物ドラッグの勧誘そのものである。


 邪な思考はおくびにも出さずに笑顔の仮面を被った俺は相手の反応を待つ。俺の目の奥を見つめる村の長の視線を受け止め続ける。



 食いつけ、食いつけ。





「一度、試させてもらウ」

「おお、ありがとう」


 かかった!



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今回の成果

フォレストウルフの『あし』×3

フォレストウルフの『きば』×4



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