第二章 もらりてぃな日々とゴブリン
第1話 力で支配するタイプのゴブリン
あの後の俺の行動は早かった。
まず、オークのいた群れを支配することにした。
森の中にあった100人規模の群れだ。
そこにいたゴブリンは俺とは違って1匹のオークに支配されてしまうほどの非力な群れだった。
血石の依代の力で強化された今の俺は少なくともあの時のオークであれば呪術を使用しなくとも互角以上に戦えるだろうし、なんなら呪術を使用すれば圧倒できる程度はある。
力で群れを支配するのは簡単なことだった。
向かってきたゴブリンをちぎっては投げちぎっては投げして逆らうゴブリンがいなくなったところで俺が長になることを納得させた。
次にしたのは
この群れで見つけた石榴石の依代だったが、俺は使ったことがないので知ってるはずもない。そこで、群れのゴブリンに命令して実際に使う様子を見せてもらった。
結論から言うと使い方は血石の依代と同じだった。
違いといえば呪文が異なるくらいだ。
供物を用意し呪文を唱えると、肉塊の代わりに粉末状の香が落ちる。
これを焚くことで性欲を増強させる匂いが出るらしい。
群れが急激に数を増やしたのはこれのせいだろう。
俺は依代を独占し、この依代の香の供給を調整することにした。あまりにも子作りに耽っていては群れが立ち行かないので仕方がない。
ゴブリンがとった獲物を石榴石の依代と血石の依代に交互に捧げることでゴブリンの個々の強化と人口の増加のバランスをとりながら群れの規模を増やしていった。
以前の長老のような立場である。
これによって、ゴブリンたちは俺のために獲物を捧げるようになった。
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俺の目の前ではゴブリン達が走っていた。
集落の横の森を切り開いて運動場のようなスペースを作っていた。
その目的は身体能力の測定であり、血石の依代の効果の把握だった。
彼らを利用して幾つかの検証を行った。
そのうちの主要なものを紹介しよう。
二つのグループを用意した。
片方は依代の肉塊を与えるグループ、もう片方は与えないグループ。
与える肉塊は全て鹿と兎の物なのでその返礼は『あし』だけである。
そして半年ほど与えた後に身体能力の差を比べることにした。
結果は一部を除いて予想通りだった。
『あし』というだけあって、短い距離を走る速度、持久力共に向上していた。その差は約1割程度。ここは実験前に予想していた通りだった。
意外だったのは走力以外も向上した点だ。
『あし』を継承したゴブリンはそうでないものと比べて隠密能力が高かったのだ。
『あし』は足に関わる行動全体を強化していることがわかった。
同じように『うで』は腕力、武器の技量、握力などが、『め』だと動体視力、洞察力などが上がっていることがわかった。
もう一つの検証が俺にとっては重要だった。
捧げる生物ごとの差だ。
結論から言うと、
ゴブリン>オーク>兎、鹿、猪
の順番だ。
ゴブリンは狩りで亡くなった者を使いオークはハグレを仕留めて使用した。本当は俺が食べたかったが検証の為にも我慢して集落のゴブリンに使用した。
ゴブリンとオークの差は結構小さいが元の力を考えるとゴブリンの力の継承効率は飛び抜けて高いようだ。
この集落にいるゴブリン全てを俺が喰らえばおそらく結構な力を得ることができるが、それだけはしないと決めている。
暴力によって支配しておいて今更だが命だけは俺が超えては行けない一線だ、と思う。
それに、俺の体感だがゴブリンと人間の効率は同程度だ。
つまり元が弱いゴブリンよりも勝手に強くなる人間の方が遥かに効率よく強くなることができる。
ゴブリンを殺さないと強くなれないとかじゃなくて本当に良かった。
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