第17話 一つの終わり
パチパチ
炎が揺らめいている。
俺の手には濃い緑の結晶に赤い斑点状の模様を持った髑髏があった。
元々うちの巣穴にあった依代だが、汚れを取り除いたらその下にこのような色が見えた。血石って宝石に近いものだと思う。
そして目の前にあるのは剣士、魔術士、そして盗賊の死体だ。
髑髏を手に持ちながら集中することで頭の中に呪文が浮かんでくる。
「『捧げよ、さすれば与えられん』」
発生した黒い渦が人間たちの体を拐っていく。
後に残るのは一つの黒い肉塊のみ。手元でにぎにぎと弄ぶ。
3人一気に捧げても、落ちるのは一つだけなのか。
あの依代の空間では一人一つずつだったがあそこが特別なのか。
それともなんらかの規則性があるのか。
呪文の詠唱もそうだ。あの時の詠唱は今までのものと異なっていた。
条件を満たす場合のみ使用できるのだろう。
そしてあの空間にいた鵺のような生物。あれが依代の本体、というか持ち主だと思う。
この髑髏を通して、死体を貪り、余った部分を使用者へと還元する。
俺たちゴブリンはあれの先兵のような存在で人間を滅ぼすために作られたとか?
それとも単に俺たちはあいつの食指であいつが食べる物を集めるために作られたのだろうか?
大それたことを考えたがどっちでもいいか。
肉塊をいつものように口に運ぶ。
頭にあの声が響いた。
『うで』
『あし』
『こころ』
還元される部位についてもなんとなく規則性が見えてきていた。
還元されるのはその存在の秀でた部分だ。
鹿であれば『あし』
猪であれば『きば』
人間やゴブリンであれば鍛えていた特徴が与えられるようだ。
そして少し、気になっていた『こころ』は呪術の元となる魔力だと思う。
その証拠にさっきの肉塊のおかげで明らかに魔力が増えている。
これ以外にも細かい検証が必要になっていくだろう。
あの群れのゴブリンでも使ってみるか。
依代に利用されるのは癪だが俺がこの世界で闘っていくなら力が必要だ。
「ふぅ…はぁ」
地面に寝転がった。
今日1日でゴブリンの群れから逃げ出して、オークと戦闘、その上で人間達との戦闘。俺は極度の疲労に襲われていた。気を抜けば気絶しそうな程。
特に
怠さが半端ない上に全身筋肉痛だ。
満天の夜空を見上げる。綺麗な星空に比べて、血溜まりの中で眠る俺がとても汚いもののように感じる。
俺は眠りについた。
その隣には、縄で簀巻きにされた神官が気絶していた。
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今回の成果
血石(ブラッドストーン)の持つ意味は勇気、聡明そして献身らしい
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