第11話 後藤、捕虜、1歳4ヶ月
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えー、はいという訳で現在はオークに連れてこられて奴らの集落?の側に掘られた穴の中に放り込まれたようだ。
高さは3メートルほどあり、確かに非力なゴブリンを閉じ込めておくなら十分な物だ。
時々やってくる見張りを寝たふりでやり過ごしているが、騙されてくれるのもそんなに長くはないだろう。
薄目で周りの様子を見ているが、どうやらこの穴はゴブリン達の集落の端にあるようだ。
もしかすると、ここは元々牢屋代わりに使われていたのかもしれないな。
「まず逃げ出すにしても、ここの集落の情報を持っておきたいな」
彼らの目的は俺の群れの情報だと思われる。
ならば、俺が目を覚ましてから拷問という感じだろうか。
「少し賭けになるが、行けるか」
彼らの集落の規模にもよるが、遠くから聞こえてくる喚き声からして100は下らないだろう。
俺は穴の壁の影に座り込んで作業を始めた。
◆
「ゲギ、イナイ」
自分よりも、強く、大きい者の命令によって穴の囚人を監視しに来たゴブリンは、一眼で先ほどまで見えたはずのゴブリンの姿がないことに気づいた。
「デタ、キエタ?」
体を傾けて覗き込んだ瞬間、下から首に紐が掛かる。
「グッ」
下へと引っ張られた体は簡単に穴の底へと消えていった。
再び先に石のついた紐が投げられる。
紐が引っ張られるがきの枝に運よく巻きついたようで紐がピンと張る。
しばらくするとその紐を何かの影が登ってくる。
そして穴の淵に足をかけ立ち上がった。
そう、俺である。
◆
哨戒していたゴブリンと腰蓑を入れ替えた俺は、群れの中へと入っていく。
この規模の群れであれば、全員の顔を覚えているということはないだろう。
だってゴブリンだし。
実際、すれ違うゴブリン達に挨拶すると向こうも挨拶してくるし。
「おっす、おっす」
「グギャァ…?」
少し「誰こいつ?」と考えたのちに「まあいいか」と言った感じの態度をとってどこかへ行っている。
群れの規模は、穴の中で想定した通り100匹強くらいだ。
そして俺は集落、そう集落を見渡す。
やはり俺たちのものとは桁が違うだけあって、10以上の建物がある。
遊牧民のテントのような感じのものだ。
あぁ、思い出した、ゲルだ。
適当な建物の中を調べておきたい。
潜入のコツは堂々としていることだ。
「お邪魔しまーす…おっとぉ、お邪魔しました」
おやおや、まさかコウノトリさんがご来宅とは。
彼らは俺が入ったのにも気づかずに盛っていた。しかも、そこにいたのは複数カップルであった。まるで、乱れたサークルのようだ。
その後、いくつかの天幕に入ったがどれも同じような状態だった。
一つ気になったのは全ての部屋で香炉が焚かれていた。
さらに奇妙なことに、そこから漂うのは甘美な香りなどではなく昆虫の匂いを濃くしたような頭が痛くなる匂いだ。
実際に頭痛くなってきた。
あまりこれを吸うのは良くないだろう。部屋の中を覗く時には息を止めてから入るようにした。
最後に入るのは他のものよりも一回り大きい。
もしかしなくてもオークの部屋だろう。
中からは生物の気配はしない。
おそらく集落の外へと出ている、今のうちに覗いておこう。
「こちらのお家は、おや」
あの臭いがするのは先ほどまでと同じだがここには加えてあるものがあった。
「これは、髑髏?」
うちの巣穴にあるのと同じような髑髏である。
ただ…
「真っ赤だ、もしかして宝石か。昔見たルビーよりは紫っぽいし、ガーネットって奴か?向こうと同じ宝石がこっちにあるかは分からんけど。これがさっきの乱○パーティーの原因か?」
おそらくそうだ。
そして、これを使い始めたのは最近だろう。
この集落の周辺の地形は見たことがある。その時にはこんな集落は無かったはずだ。
オークがこれを持ってきたか、オークが来たことでこれの使い方がわかったかのどちらかだろう。
「持って帰りたいけど、何か悪影響あったら嫌だしな。でも、このままにしておいたら数が増えて面倒だな」
というわけで拝借。
実はうちの髑髏もこっちの髑髏も結構小さい。野球ボール程度だ。ゴブリンであっても片手で収まるサイズだ。
だからこそ、巣穴の髑髏が誰の物であるかわからなかったのだ。
間違いなく髑髏は人工の物だ。宝石でできた骨格なんて聞いたことはないからな。
右の眼窩から紐を入れ、左の眼窩に通すと、輪を結ぶ。
髑髏のネックレスの完成だ。
「これは間違いなく蛮族」
腰蓑で上裸なのに加えて怪しいネックレス。
ゴブリンに恥じない異様なファッションである。
俺は、未だに嬌声が響くゴブリンの集落から抜け出すと、俺の帰るべき巣穴へと走っていった。
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ちなみにガーネットはラテン語で「種子」という意味らしいです。
石言葉は「真実」「情熱」「友愛」「繁栄」「実り」など。
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