第127話【指定封印/閲覧不可】最終話:ゲームオーバー:2


「くぅ~疲れましたwこれにて完結です。実は、ビジイクレイトが『神財』を得たのがきっかけでした。本当は、普通の異世界転生の物語にしようと思ったのですが……」










「いや、チョイスが古くさすぎるだろう。何年前のミームだい? それ?」


 少し大きめのマメ本に、少し小さめのマメ本がツッコみをいれる。


「え? WEB掲載している小説の最終回といえば、くぅ疲じゃないの?」


「インターネット老人会はこちらですか?」


 小さめのマメ本を、大きめのマメ本が上に乗って押さえつける。


「ぐぇええええ!?」


「さて……冗談はこれくらいにして。聞きたいことがあるのだけど?」


「当たり前のように下敷きにしながら質問をするんじゃないよ。話をしたいなら、まずは退きたまえ」


「ききたいことが、あるんだけど?」


「ぐええええええ!?」


 さらに重さをかけるように、大きなマメ本は体を動かす。


「このままでは、つぶれてしまうよ。小さくて可愛い僕が!」


「それ以上小さくなったら、もっと可愛くなるわね。よかったよかった。それで、質問なのだけど、どう思う? あの子、おとなしくついて行くみたいだけど」


 大きなマメ本の言葉に、小さなマメ本は一度黙る。


 彼らの前では、彼らの主ビジイクレイトが、強面の男たちに囲まれていた。


「あの子なら、あの程度の相手、何人いても蹴散らすことが出来るのに……」


「……必要ないのだろう。元々、主は『闇の隠者』にもう一度接触するつもりはあったみたいだからね」


「中央に向かうつもりだったものね。文字通り、渡りに船、ではあったのでしょうけど」


 大きなマメ本は、少しだけためて息を吐いた。


「あんな風に、脅されるフリをする必要は……あったのかしら」


「ある、ということは分かっているだろう? というか、ああいう主の立ち振る舞いに不満を覚えるのは僕の役目だと思っていたけど?」


 小さなマメ本の指摘に、大きなマメ本は気まずそうに体を動かす。


「うう……そうだけど。可愛いあの子が、あんな男たちに囲まれて泣きそうな顔をしているのが、演技だと分かっていても……ね?」


 彼らの主であるビジイクレイトは、強面の男たちに囲まれて、泣きそうになりながら震えている。


「ひ、ヒドいことしたら、ヒドいからな!」


 と、なんとも小物臭いセリフまでしっかりと言うのを忘れない。


「ううう……かわいそうに」


「そうかい? 僕には主が楽しんでいるようにしか見えないね」


 その証拠に、ビジイクレイトは半笑いだ。


「それに、主を囲んでいる者たちは、主の様子に困惑しているしね」


 ビジイクレイトの周りを取り囲んでいる男たちは、スカッテンの部下。


 つまり、『ツウフの魔境』でビジイクレイトたちと共にレベル8の『ヴァイス・ベアライツ』と戦ったモノたちである。


 そのため、当然ながらビジイクレイトの実力にある程度気づいている。


「あれは、鎖につながれていない獅子を捕らえろと命令されているようなモノだよ。なのに、その獅子が子猫のフリをして怯えている。わけが分からなくて余計に怖いだろうね」


「猫! そういえば猫ちゃんも、もふもふよね。猫ちゃんの童話とかあるかしら」


 大きなマメ本の急激な話題の変え方に、小さなマメ本は少々驚く。


「あるだろうが……切り替えが雑すぎないかい?」


「んー……まぁ、あの子が傷つけられるわけでもないし、いったん放置しましょう。どちらかと言えば、気になるのは今のPVの状況よ。実際、どうなの?」


「あの白熊に使用した金太郎の鉞に、双子につかった毒林檎で消耗してしまったからね。この10日で取り戻したが……」


小説投稿 52日目


累計PV: 7048PV 残りPV:3073PV


 これがビジイクレイトの……PV稼ぎの美辞麗句のPV数だ。


「3000PVは越えたけど……まだまだね。せめて使用出来るPVは、1万PV……いや、2万PVは欲しい……そう思わない?」


「それはそうだ。だから、それも理由なのだろう。このまま彼らに付いていけば、普通に情報収集するよりも、PVが増えそうな展開だ、と主は思っている」


 言いながら、小さなマメ本にはひっかかりがあるようだった。


 不安と、不満というひっかかりが。


「何か気になるの?」


「いや、確かにこのまま『闇の隠者』についていけば、出会いや何かしらのイベントは発生するだろう。しかし、それがPVにつながるようなモノだとは思えなくて……」


「それは、あの子のああいう態度のせい?」


 サロタープにも怯えた様子を見せるビジイクレイトを、二人は見守る。


「まぁ、そうだね。わかりやすい悪人を、主人公が圧倒的な力で倒す。やっぱり、こういう展開の方が人気は出やすいからね」


「そういった内容とは真逆だものね。あの子が書いているこの小説は。でも、しょうがないじゃない。あの子は、『隠す』って決めたんだから」


「そうだね。それでも、やっぱり僕は主に活躍してほしいのだよ」


 小さなマメ本は、力なく息を吐いた。


「……あの子が堂々と力を使えるようにしないと、ね」


「……ああ」


 そっと、大きなマメ本は小さなマメ本の上からどいた。


「それはそうと。ちょっと提案があるんだけど」


「なんだい?」


「PVを増やすために、面白い展開が必要って話をしていたけど……もっと簡単にPVを増やせる方法があるのよ」


「なんか、うさんくさいけど……それは、どんな方法だい?」


「ずばり、お願いよ」


「……お願い?」


「ええ。WEB小説の人気は読者の方からの評価が一番大きな要素だからね。だから、小説の最後に、お願いを書くと効果的らしいのよ」


 小さなマメ本は、大きなマメ本の考えを吟味し。


「そうかい。それなら、お願いをすればいいんじゃないかい?」


「うん。じゃあ、お願い」


 大きなマメ本は、小さなマメ本の肩をたたく。


「……はぁ? 僕がするのかい? こういうのは言い出した者がやりたまえよ」


「いや、私は本編には出てないから……ちょっとミステリアスなキャラでいたいというか、お願いとかで変なキャラつけたくないし」


「もうすでに変なキャラという自覚はないのか」


「……なにかしら?」


 大きなマメ本が、小さなマメ本の上に飛んで、周りを旋回する。


「くっ、もう一度飛びかかる気かね? いいだろう、そのときは僕にも考えがあるよ」


 小さなマメ本は、おとなしく乗られた先ほどと違って臨戦態勢だ。


「むむむ……」


「うぬぬ……」


 大きなマメ本と、小さなマメ本はしばらく見つめ合う。


「……もう、しょうがない、か」


 すると、あきらめたのか大きなマメ本から力が抜けた。


「む? どうやら今回は僕の勝ち……」


「っと見せかけて、隙あり!」


「ぐはっ!?」


 完全に油断した小さなマメ本の上に、大きなマメ本が乗る。


「ぐ……この……」


「まだまだ、ダメねー。こんな調子じゃ、『人間の姿』に戻れても、あの子の力になれないわよ?」


「うるさいのだよ!」


 じたばたと小さなマメ本が暴れるが、大きなマメ本から逃れることが出来ない。


「はい。じゃあ、あきらめてお願いしなさい。台本はここにあるから」


 大きなマメ本は、小さなマメ本に紙を見せる。


「うむむ……えーっと『この小説が面白いと思った方は、↓から応援と+フォロー、★で称えていただけるとうれしいです。てへっ♡』……最後のてへっ♡はいるのかい?」


「ふむ。まあまあね。あの子が書いている本編だと入れにくいから、たまには私たちのパートでこうしてお願いをしましょう」


「この【指定封印】は、別に何でもありのギャグパートってわけではないのだがね」


 小さなマメ本は、ぐったりとしている。


「そういえば、次からは掲載していなかった№01と№03の【指定封印】を載せようと思うのだけど、どうかしら」


「また唐突に……いいんじゃないかい? 【指定封印】が破られている様子はない。ならば、問題ないだろう。それに、主はしばらくの間、『闇の隠者』関係で忙しいだろうし」


 ビジイクレイトは、男たちに連れられていく。


 船がいつの間にか止まっていた。


 どうやら目的地に着いたようだ。


「良いネタになればよいのだがね」


「それも、あの子が活躍できるような、ね。じゃあ、最後にもう一度お願いよろしく」


「もう一度するのかい!? はぁ……」






『この小説が面白いと思った方は、↓から応援と+フォロー、★で称えていただけるとうれしいです。てへっ♡』















「……絶対に最後の『てへっ♡』はいらないと思うのだが」


「まぁまぁ、可愛いわよ」


「僕が可愛いのは事実だがね! まったく、こんなことをさせて。本当に、この大きな豆本を主がまだ認識出来ていないことを僕は嬉しく思うよ」


「私は、あの子の事を見ているだけで幸せだから」


 大きなマメ本は、そっと小さなマメ本を抱きしめる。


「もちろん。アナタもよ。マメちゃん」


「……ふん」


 2冊の本は、彼らの主であるビジイクレイトのことを見守り続けるのだった。












「あ、もう一回お願いしないと! あれは最後にしないと効果が薄いのよ!」


「もういいだろう!」

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