PV稼ぎの美辞麗句

第77話 『魔聖石』

「え……？」

「いや、俺も言ったと思うけど……『ノーマンライズ』に向かっていたのは、『魔境の開拓』があるって聞いていたからなんだよね」

「え、なんで？　なんでその情報を？」

「ちょっと調べると、これくらいの情報は手にはいるよ」

　ジスプレッサがどのような伝手で手に入れたのかわからないが、ビジイクレイトも同じ情報を持っているのだ。

　一人が知っていることは、みんな知っていると思う方が自然である。

「というか、少年。言葉遣いが……」

「『魔聖石』を狙っているなら、丁寧な言葉じゃなくてもいいかなって。敵だし」

「うぐっ！？」

　ジスプレッサが何やらダメージを受けている。

　知ったことではないが。

「せ、せっかく、あこがれの貴族の従者っぽい美少年を見つけたと思ったのに……言葉遣いが……敵って言われた」

　本当に知ったことではなかった。

「……それで、どうするの？」

「どうする、とは？」

「俺に協力してほしいんでしょ？」

「それは、そうだけど……少年も『魔聖石』を狙っているなら、無理じゃないか」

　ジスプレッサの回答に、ビジイクレイトは頭を押さえる。

「あー……『魔聖石』なんて、みんな欲しいんだよ。そんなの当たり前で、それを前提に話をしないと」

　ビジイクレイトが何をいいたいのか、ジスプレッサはまだピンとこないのだろう。

　不思議そうに頭を傾げている。

「……俺だって、命の恩人の願いを無下にはしないよ」

「つまり……手伝ってくれるということか！！」

「いや、そうは言ってないよ」

　一瞬、飛び上がりそうなほど喜んだジスプレッサは再度沈む。

「……どういうことなんだよぅ」

　涙声だ。

「……だから、交渉だろ？　さすがにタダで手を貸すのは無理だけど、条件次第では『魔聖石』をそっちの好きにしてもいい」

「本当か！？」

　ジスプレッサがまた跳ね起きる。

『……沈んだり飛んだりしているから、ボインボインとスゴいことになっているね。もしかして、主。それが狙いかい？』

　ジスプレッサの体の一部を見ながら、マメが冷たい声で言う。

『やめろ。風評被害だ。あそこまで動くなんて想定外なんだよ』

　まぁ、眼福ではあるのだが。

　そのことは顔に出さずにビジイクレイトはジスプレッサとの会話を続ける。

「それで、どんな条件にする？　俺を仲間にするのに」

　ビジイクレイトの質問に、ジスプレッサは即答した。

「な、なんでもする！」

『ん？　今なんでもするって言った？』

『やめろ。反応するな。いかがわしい』

　マメがノリノリで身を乗り出すのを、ビジイクレイトはそっと止める。

「なんでもって、女性がそんなことを言うと、変な意味に聞こえて……」

「とりあえず、おっぱいを揉むか？」

「変な意味で言ってやがった！」

　むにゅっとおっぱいを強調させたジスプレッサの方を見ないようにビジイクレイトは目線をそらす。

「あ……どこか、変なのだろうか？　体つきには自信があったのだが」

「いや、変ではない……いや、変だけど。やっぱり変じゃ……いや、変だ。変だよ」

　ビジイクレイトも混乱して色々おかしなことになっている。

「変なのか？男性はいつも私のおっぱいを見て嬉しそうにしていたから喜ぶと思ったのだが……」

「嬉しそうって……触らせていたのか？」

「いや。皆、私の年齢を聞いたら逃げていった」

　少しイヤな予感がしているが、ビジイクレイトは聞いてみることにした。

「年齢って、何歳なんでしょうか？」

「12歳だ」

　最悪だ。

　イヤな予感的中である。

『……主よ。大丈夫かい？　この娘、12歳で胸を触らせるとか言っているが』

『大丈夫……じゃないな。倫理的に。12歳であの体つきは……いるか。いるだろうけど、なんで同い年なんだよ』

　頭が痛い。正直に。

『……この話も投稿するのかい？ 規約とかに引っかかりそうだけど』

『実際にそういう行為をしていなければ大丈夫だと……思いたい』

『男達が逃げていったと言っていたね。ここでも未成年とはそういうことはNGかい？』

『当たり前だろ？　身体が成長していない段階で、そんなことしてみろ。色々問題が起きるだろ』

　特に妊娠などは母体に負担が大きすぎる。

　禁忌となるのは当然だろう。

『まぁ、15歳が成人だし、身体が成長したら、そこら辺はユルそうだけどな……』

『……彼女、だいぶ育っているけど、大丈夫なのかい？』

『まぁ、逃げていったそうだし大丈夫……なんか、何が大丈夫なのかわからなくなってきたな』

　考えると頭が痛い。

『いっそ、書くときは彼女の年齢を誤魔化すとか？』

『……同年齢でそれをすると、色々齟齬が出そうだからな』

　ジスプレッサが少しでも年上ならば、可能だったかもしれないが、同い年だと難しそうである。

「なぁ、先ほどからどこかを見ているが、大丈夫かい？」

「ん？　ああ、大丈夫大丈夫」

　大丈夫って、なんだろうか。

　もう、大丈夫と言い過ぎているが、大丈夫なのだろうか。

「えっと、じゃあ、なんだっけ。えっと……」

　とりあえず、ビジイクレイトとしてはジスプレッサのおっぱい云々から会話を離したかったのだが。

「私のおっぱいを触るのを条件に、協力してもらえないか、という話だ」

　ジスプレッサが戻してしまう。

『くっ……もう、会話から逃げたい』

『おっぱいから逃げるなー』

『おっぱいからも逃げたい……』

　ジスプレッサのおっぱいがプルプルと揺れている。

「あーそんなに簡単におっぱいを触らせるとか言っているけど……そういうことはよくやっているのか？」

「そういう事とは？」

「んー……キスとか？」

「キス！？」

　ジスプレッサが突然慌て始める。

「き、キキ、キスなんて、するわけないだろう！？　赤ちゃんが出来てしまう……」

『あー……』

　ジスプレッサの答えに、マメが何やら納得したような声を出す。

『彼女はあれか、肉体は成長しているのに、性的な知識は乏しいタイプか』

『おっぱいを簡単に触らせるなんて言ってくるのも、知識がない……というか幼さからくる提案なのかもな』

　小学生がくだらない下ネタで盛り上がるような感覚なのかもしれない。

『ふむ。しかし、彼女を見ていると、悪い男に騙されてヒドい目に遭う様子しか想像出来ないのだが……』

『奇遇だな。俺もだ』

『この場合、悪い男とは主のことだがね』

『やらねーよ。そんなPVが下がりそうなこと』

　下手をすると投稿さえ出来なくなりそうである。

　今でも、ジスプレッサはビジイクレイトに向けて胸を張ったりしておっぱいをアピールしているのである。

　これが、性的な意味をまったく理解していなくてやっているのだ。

　もう、罪悪感が半端ではない。

「あー……とりあえず、おっぱいはなしで」

「そんな！？」

　ショックを受けているジスプレッサは無視する。

　とにかくおっぱいから話題を変えないといけない。