第74話 熱中症?


「……体が熱い。なんだこれ」


 ビジイクレイトは、ジスプレッサの元にたどり着くと、すぐに彼女の姿勢を動かして、仰向けにして抱き抱えた。


 人が倒れたらなるべく動かさない方が良いことはわかっているが、それはすぐに医者に見せることが出来る場合だ。


 最低でも呼吸が出来るように仰向けにして気道は確保するべきだろう。


「……うぅ……」


 ジスプレッサが苦しそうにうめいている


「意識はあるか? 何か、症状に心当たりはあるか?」


「ひや……」


「ひや?」


「ひや……して……」


「ひやして……冷やして? 冷やすって……」


 確かに、ジスプレッサの体は熱い。


 正確にはわからないが、40度近い体温かもしれない。


「雪に埋める……ってここら辺の雪は溶けているな。ちょっと待ってろ」


 ジスプレッサの炎の影響で、周囲の雪は溶けている。


 少し移動すると雪が積もっている場所があったが、人の体を包めるほどの量はない。


(熱中症の場合、水風呂というか、氷風呂に患者を突っ込むことがあるらしいけど……『冷水イマージョン』だっけ? 今はそれは出来ないから……)


 今、ジスプレッサは熱中症のような状況かもしれない。


 ……冬なのだが。とりあえず体温が異様に高い。


 ならば、体温を冷やす必要がある。


 ビジイクレイトは雪を握っていくつが雪玉を作る。


 それを、ジスプレッサの首、脇、ふとももの付け根に置いていく。


「うわ、どんどん溶けていく」


 溶ける度にいくつも雪玉を作ってジスプレッサに当てていく。


「水も飲ませた方がいいか……塩と砂糖も少し混ぜて……」


『雲水の筒』で溶かした雪から作った浄化した水に適量はわからないが、塩と砂糖などを適当に混ぜた簡易版のスポーツドリンクを作ってジスプレッサに飲ませる。


 しばらくすると、ジスプレッサの体温は正常な範囲にまで下がっていった。


「これでいいかな……」


 ビジイクレイトは汗を拭う。


 周囲の雪は溶けているため、移動して雪玉を作ってはジスプレッサへ当てるという作業を繰り返したため、暑かったのだ。


『なぁ、主よ』


『なんだい、マメよ』


『体温を下げるなら、この暑い場所じゃなくて、雪の多い場所に連れて行く方が早かったんじゃないかい?』


『……あ』


 ビジイクレイトは、明らかに動揺した。


 わざわざ雪がある所から雪玉を作って持って行くよりも、雪がある所へ連れて行く方が確かに早い。


 それに、周囲はジスプレッサが放った炎で、気温が上がっているのだ。


『ま、まぁ、それはその……』


『こんな調子でPVを稼ぐ事は出来るのだろうか?』


『ウグゥウ……』


 ぐうの音も出ない。

 ぐうと言ったが。


 ビジイクレイトはその場に座り、しばらく落ち込んだ。





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