第59話 『童話アプリ』
「『三匹の子豚』とかどうだ? あれは、家が出てくるだろ? 藁とか、木とか」
「ゴミクズのような答えだね。ヤレヤレ、コレが主とは呆れるよ」
「お前、買ってすぐだけど壊れるか? ああん?」
グニグニとビジイクレイトはマメをつかむ。
意外と柔らかい材質で気持ちがいい。
「やめたまえー美少女が! 美少女の顔が崩れるぅ!」
「どこが顔なんだよ!」
表紙だろうか。
「で、そんな偉そうなことを言うマメ助は、何がオススメなんだ?」
「『マメちゃん先輩』と呼びたまえ」
「マメ助」
「……『マメちゃん先輩』」
「マメ助」
「………………」
「………………グスっ」
涙目になったマメの負けである。
諦めたマメは、しぶしぶといった様子で答える。
「まず、『三匹の子豚』を選ばない方が良い理由からだ」
そこからのマメの説明をまとめると、以下のような内容だった。
1 『童話アプリ』など、物語のアプリは、その物語に登場する人物やモノをPVを消費して使用できる。
2 基本的に、モノよりも人物の方が消費が大きくなる。もちろん例外はあり、強力なモノはそもそも買えない時もある。
以上から、『3匹の子豚』の場合、藁、木、煉瓦で出来た家を買うことは出来る。
「まぁ、一夜を過ごすだけなら煉瓦の家も悪くはない。ああ、藁とか木の家なんて愚かな事はやめたまえよ、主。物語の性質を再現してしまうから、風が吹いたら飛んでしまう」
「……流石に消費PVが同じなら、藁とか選ばなかったと思うが……って、ちょっとまて。物語の性質が再現されるなら、もしかして、『3匹の子豚』の家は狼とか狼の魔獣を呼び寄せるのか?」
「ん? そうだよ。目に入ったら……というか、狼とかの場合は匂いとかでもやってくるだろうね。アレは、そういう性質の建物だ」
「マジか。だったら『3匹の子豚』を選べないな。煉瓦の家にも狼は来るってことだろ?」
「そうだね。まぁ、狼が来ても倒せば良い」
「倒せるわけないだろ」
ビジイクレイトはそこまで強くないのだ。
普通の狼が一匹で来るなら何とかなるかもしれないが、群れで来たらアウトだ。
魔獣の狼なんて、考えたくもない。
「ふーん? そうなのかい。まぁ、そこら辺は主に任せるが……どちらにしろ、現状では『3匹の子豚』よりも費用対効果を考えると、もっと良いモノがあるだろう?」
「もっと良いモノ? なんだ? 他に家が出る物語なんてあったか?」
「それは、『ヘンゼルとグレーテル』だよ」
「……あ」
その答えを聞いて、ビジイクレイトは即座に理解した。
「主は、おそらく食料も持っていないだろう? ならば、住居と食料を同時に手にすることができる『お菓子の家』が、一夜をしのぐ天幕を手にするには最適じゃないだろうか?」
マメの指摘に、グウの音も出なくなる。
しかし、マメのドヤ顔がうるさいので、とりあえずグニグニしておく。
「ギャー!D.V.主!D.V.主!」
「だからそれはやめろって。はぁ、でもマメ助のいうとおり、買うなら『ヘンゼルとグレーテル』だな」
ビジイクレイトは、さっそく物語アプリから、『ヘンゼルとグレーテル』を選ぶ。
「100PVか。しょうがないよなぁ……」
少し悩みながら、購入を押す。
「でも、今の状況を改善するなら、そもそも天幕じゃなくて、空を飛べる道具が出る物語を買って、近くの町に行くのが一番良いと思うが……」
「……え?」
『ヘンゼルとグレーテル』の購入が終わった瞬間、そんなことをマメは言い出した。
「な、今頃そんなことを言うんじゃねーよ。もう『ヘンゼルとグレーテル』買ってしまったじゃねーか!」
「ずっと、『天幕が欲しい』としか、主は言ってないじゃないか。僕は悪くない」
「ちくしょうめぇえええええ」
すでに購入してしまった『ヘンゼルとグレーテル』のアプリの前で、ビジイクレイトはただ悔しがった。
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