3章 交錯している気分だ
15話 手遅れ
2022年。横浜商店街。
「────と、もうそろそろ目的地に到達するな」
「え!?もうそろそろ盛り上がりを迎えるってタイミングで話打ち切るなんて事ある?ドラマなら炎上案件だよ」
クロースが目的の人物である、凪の働く商店街を目に捉えた所で一旦、八代木 雪菜とメアリーの話は幕を閉じた。
これから衝突して話は大きく動き出す────という所で話が終わった事にバケットハットを被ったメンバーの一人、ヴェルはオーバーリアクションをしながら愚痴をこぼした。
しかしクロースは生真面目な表情を崩さずに、淡々とした調子で言葉を返す。
「また今度、任務が終われば話す。魔術師狩りが動いているという情報がある以上、八代木 凪と接触するこの先からは気を引き締めて行くぞ」
クロースの固い物言いにヴェルはいかにも怠そうな顔を引き下げるが、その後は黙って後ろをついて行った。
「まあ、とは言えこんな人混みで荒事なんて起こさないと思うけどね……」
商店街に足を踏みれる直後、『
時刻は夕方の五時半。
季節が夏という事もあり、辺りは丁度夕陽の放つオレンジに染め上げられている時間だ。
そして、商店街にとってこの時間は最も忙しくなる時間でもある。
仕事帰りの主婦や、学校終わりの高校生などが商店街に集まり、各々が今日の夜ご飯の惣菜や、買い食い用のコロッケなどを買って行く。
商店街にはまさに人の波というものが形成されており、『
「こんな所で襲ってきたら確かにビックリだ」
金髪のロングヘアが特徴的なハルディアが、人混みに対して溜息を混ぜながら呟いた。
しかしクロースは相変わらず生真面目な調子で言葉を返す。
「しかし警戒は怠るな。奴等がいつ何処で動き出すか。それがわからない以上、気を抜く理由は無い」
クロースはメンバーのリーダーという事もあってか、他の三人に比べると、明らかに表情を固くさせながら商店街を進んで行く。
人の波は相変わらず止まる事を知らず、商店街には商売繁盛を証明するかのような声が鳴り止まない。
このまま平和的に接触できれば越した事は無い────そうクロースが思っていた矢先だった。
「総員、警戒せよ」
クロースの口から放たれた低く、重圧を感じる言葉を聞いた瞬間、『
「どうしたんすか」
ハルディアがクロースに何を見たのかと尋ねると、クロースは額に味を滲ませながら答える。
「少し────遅かったか」
× ×
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