12話 どんな手を使ってでも
「今日もメアリーからの返信は無し……と」
雪菜達が通っている校舎の隣に聳え立つ魔術協会総本部────その最上階。
最上階には魔術協会の中でも『上層部』と呼ばれる者達のみが足を踏み入れることを許される場所であり、普通の生徒や身分のものが入ろう者なら厳しい罰則が待ち構えている。
そんな最上階にあるとある部屋で一人の少年が溜息を吐いた。
生真面目と取れる様な無地のスーツを着た少年────アルフレッド・バードはメアリーの写真を見つめながら、物憂気に言葉を続ける。
「私の手に治れば必ず君の存在を有効に活用できると言うのに……何故そう頑なに断るのか。なあ、どうしてだと思う?」
アルフレッドに問い掛けられた部屋の端に立つ男はクツクツと笑いながら言葉を返した。
「そりゃあアンタが嫌いだからだろ。少しでも好意を持ってる女ならすぐにアンタに靡くだろ」
「雇われの身でその口の利き方は本当にどうしようも無いなお前は」
「ならお父様にチクッてみるか?こんなゲスい作戦がバレる事になるけどなぁ?」
男は部屋の端から段々と部屋の中央に歩き始め、その姿が影から露わになって行く。
貴族とは到底思えない崩した服の着方。
さらには黒髪の合間に染められた青色の髪。
そして口調。
全てが貴族とは正反対な男の身なりは少々部屋に似合わないとも取れるだろう。
そんな男────レクサスは下卑た笑いを続けながら言葉を紡ぐ。
「どうせなら堕ちるとこまで堕ちて見ても良いんだぜ?」
「断る。それにこれ以上会話も不要だ。魔術師狩りとしての腕を遺憾なく発揮してくれれば金はしっかりと出す」
「はいはいわかったよ。ガキの癖に可愛くねえぜ。俺の知ってるお前ぐらいのガキはよく泣き喚くぜ?」
レクサスはわざとらしくアルフレッドに顔を近付け、脅しとも取れる言葉を吐くが、アルフレッドは眉一つ動かさずに言葉を返した。
「お前に
アルフレッドはレクサスの態度に対してその場で小さく溜息を吐くと、忌々しげにメアリーの写真を見ながら言葉を続けた。
「そろそろ私は我慢の限界だ……どんな手を使ってでも彼女を連れて来い」
「ストーカーも極まれりだな」
レクサスはそう言うと、アルフレッドに対して踵を返して部屋を後にした。
部屋には少しの静寂が訪れたが、アルフレッドが静かに呟いた言葉により、その静寂は僅かに掻き消される。
「
× ×
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