8話 八代木 雪菜


「しかし、まさかが動いてるなんてね」


「あれ本当なの?不死者に加えて魔術師ってさ」


 『巡礼者ピルグリム』一行は、フロッグに伝えられた通りになぎが働いている横浜橋商店街の出店に向かっていた。

 段々と夕陽は落ち、辺りには闇が蔓延し始めている。

 しかし横浜は大都市に部類される為、人の影はまだまだ無くなることは無かった。

 寧ろ、商店街はここからが忙しくなる頃だろう。


「保護すべき不死者の名前は八代木やしろぎ 凪と八代木 夕。もしこの苗字が本当なら魔術師狩りが動くのも頷ける」


 クロースは頭の中に魔術協会の中でも有名人とされている日本人の名前を思い出しながら言葉を続ける。


「もし……本当に雪菜様のご子息となれば、必ずや我々が保護しなくてはならないのだ」


「八代木って、あの協会の上層部に歯向かった人ですよね?そんな人の保護って俺達にまで危険が及ぶんじゃ?」


 バケットハットを被った男───ヴェルは魔術協会に席を置いていた時に聞いた記憶を思い起こした。


「私もそれ聞いた事がある。上層部の人間に手を出してどうたらって」


 マキアも八代木に関しては断片的ではあるが、何かを知っている様だった。

 しかしその二人の意見を聞いたクロースは残念そうに首を横に振った。


「そうだな、目的地まではまだ時間もある。君達にはあの事件の真実を伝えておかねばならないな」


 ヴェル、マキア、ハルディアは共に顔を見合わせ、クロースが何を言いたのか疑問に思った。

 そんな三人を他所に、クロースは昔話を始める。


「これは私もフロッグさんから聞いた話なんだが……」



「八代木 雪菜は────」


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