第8話
第7話で登場したストーカーAから守ってくれた移動先のKさん。
彼は私より2歳上のサーファー。
茶髪で色黒のカッコいい人だった。
仕事にも遊びにも全力で、どんどん魅かれて
行った。
相談相手から恋人になるという典型的な流れで
気がつくと私はウエットスーツを着て
千葉の海でサーフボードに乗っていた。
今まで、ボーリングやビリヤードで
男の人に負けた事がなかったが、何をやっても完敗する人に会えた。
待ち望んでいた人物に心が踊った。
でも、一番盛り上がっている時期に私は
大失敗をし、Kに嫌われてしまった。
メールも電話もシカトされ、2週間頑張ったが
無理だった。
元はと言えば自分が悪いのだが、逆ギレという
気持ちがムクムク湧いて来てしまい、
あ〜結構だよ! と、反省の気持ちがなくなってしまった。
大失敗といっても、メールのやり取りで
友達に送るのを間違えてKに送ってしまい
その内容が照れからKの事を少し悪く書いてしまっていた、だけの事。
そうそう書き忘れていたが、その頃は店舗が
閉鎖になり、バラバラの場所にいたので
出勤すれば会えるという状況ではなかった。
会わなくなって2ヶ月が経った頃、やっぱり
運命の人なのかと思う出来事が起こった。
Kは営業マンだったので日曜日は出勤なのだが
たまたま休みを取っていて吉祥寺に買い物に
来ていた。
私も何年ぶりかで吉祥寺に買い物に来ており
数ある駐車場の中、同じ場所・同じ時間に
バッタリ。
目を合わせたまま、無言の何秒間。
Kは唐突に、
「カラオケ行くか」
「いいよ」
行ったところで最初は会話もなく、
ただ順番に歌ってるだけの苦痛の時間。
1時間ほど経った頃、お互い喧嘩の事には一切触れず世間話を始めた。
店を出る頃には、昔の関係性に戻って
ま、復縁ってやつですか。
お互い意地を張ってて、仲直りする機会を
失っていただけの事だった気がした。
何ヶ月か経った頃、Kは会社を辞めた。
自分でハウスクリーニングの仕事を始めたい
との事。
何処かに勉強しに行き、独立した後は
出来る限りの応援をした。
私が休みでKが忙しい時は、よく手伝いに行ったものだ。
最初は手伝いも楽しかったが、あんなに好きだった波乗りも行かず、休みなしに仕事ばかりの
Kとの間に溝が出来てしまった。
運命の人かと思っていたが、ついに別れの言葉を言ってしまった。
別れてからもう10年近くなるが、いまだ私の
誕生日には必ずLINEが来て、食事に誘って来る。
誕生日以外にも、何かしら用事を作っては
連絡をして来て食事に誘う。
断っても断ってもめげない。
かつてストーカーから守ってくれたKが
今では、あなたが‥‥
別れた恋人達 藤川めぐみ @PIEPOO
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