第7話

短大を卒業した後スイミングスクールに

勤めていたが、肌の弱い私は全身に発疹が出来てしまい、ドクターストップがかかってしまった。

どうやら、消毒として水の中に入れている塩素が悪さをするらしい。

このまま続けていると火傷の跡みたいなのが

全身に残るとの事。

そんな思いまでして続けたい職業でもなかった為、すぐに退職願を書いた。

会社を辞めた事を短大に報告しに行くと就職課の先生が

「トヨタから求人が来てるから受けてみたら?」

「カッコいい男性、いっぱいいるかもよ」

と、甘い言葉で誘って来た。

ん? カッコいい男性がいっぱい?

誘いを断るわけもなく、すぐに履歴書を作成し

入社試験を受け、無事合格。

その時から今に至るわけだが、この何十年の間には男女関係の問題がいろいろと起こった。

最低最悪な事件を思い出したので書いてみる。

私が30代の時に配属された部署での事だ。

そこは男女合わせて15人くらいの所だった。

営業マンが8人ほど。

その中の既婚者であるAが忘れもしない最低な

男だった。

私に好意を抱いていたAは、事ある事に食事に誘って来る。

仕事もバリバリする童顔のAの事は、同僚として尊敬もしてたし嫌いではなかった。

付き合う気などさらさらなかったが、面白半分で気のあるふりをしていた。

いま思えば、これが悪かった。

Aは真剣に私との交際を希望し、離婚すると

宣言して来た。

ここまではよくある話しだと思うが、彼は少し

違っていた。

結婚指輪を外し、私に寄越したのだ。

「これはもういらないから処分してくれ」

いやいや待ってよ〜。

私、そんな気全然ないし。

第一、彼女でもないし付き合ってもいないじゃん。

返しても返しても私のデスクの上にある指輪に

ため息しか出なかった。

指輪を外した翌日から、Aは悪魔の化身になった。

疑いようのない100%のストーカー。

仕事中に同僚の男性と笑顔で話しをしているだけで、物凄い形相で睨み付けて来る。

Aのデスクの足元には、出刃包丁が密かに隠してあった。

誰もいない時に見せられたので確かだ。

自分の思い通りに行かなかったら、私を殺すつもりらしい。

自宅に戻っても恐怖は続く。

毎晩家の前に来ては、自室に電気が付いていないと電話を寄越し、何処に誰といるんだ、と。

勘弁してほしい。

私はあなたの女じゃない。

頭がおかしくなりそうだった。

そんなある日、弁護士から内容証明が届いた。

浮気による離婚の慰謝料がどうのとか。

それと同時にAの奥さんと言う人から自宅に

電話が来た。

運の悪い事に、母親が対応。

「お宅の娘は、私の旦那をたぶらかしてる」

怒鳴りつけて来たそうだ。

家に帰っても、信じてくれない母親との修羅場。

本当に頭がおかしくなりそうだった。

2日後、駅前の喫茶店でA夫婦・私と母親の

4人で話し合い。

我慢の限界に来ていた私は、今までの事を全部

あらいざらい奥さんに話した。

なかなか信じなかったが、A当人が認めた為

事なきを得た。

そして母親が、2度と私に関わらないと一筆書かさせた。

普通はこれで終わりなのだが‥‥

なにせ職場が一緒なので無理がある。

仕方なく上司に相談をし、店舗を移動させてもらった。

しかし執着心の強いAがそれで諦めるわけもなく、移動先の路地横で姿を見掛ける事に。

困り果てた私は移動先の先輩に全てを話し

守ってもらった。






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