第3話
大学2年の単位必修科目にスケートがある。
体育大ならではの科目だ。
富士急ハイランドで1週間の合宿が行われた。
全員胸に大学名の入ったゼッケンを付けさせられ、一般客にまじってリンクでの講習。
ダサくてイヤだったが、それを上回る
楽しい事があった。
なんと、N大とT大も同じ週にスケートの実習があったのだ。
しかも、T大は宿舎の旅館も一緒。
どちらから声をかけたのかは忘れてしまったが
夕飯後にT大の部屋に集合する事になった。
私は女子4人を誘い、差し入れのお菓子を持って
部屋を訪ねた。
仲良くなった彼らは応援団のグループで
一瞬見かけは怖い。
強面になれてる私は何とも思わなかったが、
一緒に行った女子達は最初、緊張して顔が強ばっていた。
男女10人でトランプしたり、腕相撲したりと
和気あいあいの楽しい時間は真夜中まで続いた。
男子達は黒のスェットを着てたが、一人だけ
白い人がいた。
その彼は団長との事で、白は団長の証らしい。
その団長Kに気に入られた私は連絡先を交換し、後日会う約束をした。
待ち合わせ場所で待っていると、変な団体が前から歩いて来る。
ん?
親ガモの後ろを子ガモがゾロゾロ‥?
Kが後輩を引き連れてやって来たのだ。
何故デートに後輩が。
ファミレスに入っても、後輩達は近くに陣取り‥ ‥君達はSPか?
Kに、「こんな状態、異常だからね!」
と、その日は逃げるように帰った。
ワンチャンあげようと1週間後に会った時は
さすがに1人で来た。
前回の理由を聞くと、応援団の伝統だとか。
意味がわからない。
私は週3回デニーズでバイトをしていたが
Sは、埼玉の行田から車を飛ばし2時間近くかけ客として来ていた。
最初は、何と健気な人だとほくそ笑んでいた私だったが、いつの頃からか真逆の感情が湧き上がって来ていた。
車で出勤してた私は、バイト終わりに一緒に帰るわけでもなく、
じゃね、バイバイと別れるだけ。
たまに来るならそんな感情にはならなかったと思うが、毎回姿を見るとさすがに‥
何かキモイかも。
あえて大学終わりに待ち合わせをし、
(そうすると後輩達は必ずいるから)
電車の中で別れを言った。
驚いた事に、威厳第一の団長が、後輩の前で
大粒の涙を流した。
グスングスンと鼻をすする哀れな団長に
後輩達はまるで、僕達は目も見えないし
耳も聞こえません。
の態度を必死にとっていた。
後輩君達、気を使わせてごめんね。
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