第2話

私もついに大学生。

さぁ〜青春を謳歌しようと毎日ウキウキしてた。

入学式後の何日かは、近隣の大学からサークルの誘いが来るという。

が、しかし、体育大の正門にはそれらしい姿は

ほとんど見当たらず。

女子中・女子高出身の私は何かを期待してたのに夢敗れ、やっぱり普通の女子大に行くよな‥とガッカリ。

取り敢えず気分転換に、高校時代は禁止だった

パーマをかけに美容院に出向いた。

そこには、スラット背の高いスタイル抜群の

年の頃35歳位の男性店員がいた。

本来ならその人が担当ならいいな、と思う所だが、なんせ顔面丸出し状態での美容院、さすがに恥ずかしくもあり、どうか別の人が担当になりますようにと祈った。

神様は、優しいのか意地悪なのか‥

その彼が担当になってしまった。

話をしてみると、非常に聞き上手で優しい笑顔がたまらない。

会いたいばかりに、たいして髪も伸びてないのに2週間後にまた行ってみたりもした。

そして、いつの頃からか髪を切るでもなくスタッフの休憩室でお茶を飲んで話しをするという

喫茶店状態の場所になっていた。

この店舗は、男性マスターと彼の2人で運営していたので行きやすかったのだ。

担当のSさんとは、お互い好意を抱いてるのは

わかっていたが一歩先に進めず。

いや、進めてはいけないと思ってた。

何故ならSさんは結婚していて、奥さんのお腹に子供がいたから。

仕事終わりに食事に行ったり、近場をドライブ

したりと2人だけで過ごす時間が増えるにつれ、

やはり抑えていた気持ちは脆くも崩れた。

そして私は決めた。

出産予定は9月なので、それまでの彼女でいようと。

期限を決めての恋愛なんて普通じゃないと思うが、私にはBESTの選択だった。

家庭を壊す気など全くない。

でも今はSさんと逢いたい。

あと3ヶ月‥

これ以上は好きにならないよう自分に言い聞かせながらの変な期間限定恋愛が始まった。

行った事もない場所、食べた事のない物。

初めて見たブーメランパンツ。

全てが新鮮だった。

大学で嫌な事があっても、すぐに忘れてしまうほど楽しく幸せだった。

楽しい時間はあっという間に終わってしまうもの。

あと少しで出産予定日。

会うのは今日が最後。

美容院も変えるしかないな‥

この日、期間限定の付き合いだった事を、

Sさんに秘密にしていたのを後悔する事になった。

いつものように待ち合わせをし、夕飯を食べている時にお別れしようと言った。

「ハッ? 何で? 突然?」

当然の反応だろう。

しばしの沈黙が続き、嫌だと言われた。

嬉しくもあったけど、私は心に決めてたいた事なので、「無理だよ」。

付き合い始めの3ヶ月といえば、1番気持ちが盛り上がる時期だという事もわかってる。

でも、ここは我慢しなきゃと自分にも言い聞かせ、いつもの明るい笑顔は封印した。

その後、美容院も変え一切の連絡を断った。

一度だけSの定休日を狙いマスターに会いにいった。

「Sさんどうしてる?」

「辞めたよ」

「それと、生まれた女の子の名前、君と同じ

名前を付けたらしいよ」

何とも言えない気持ちになった。




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