第四怪 霊力ト霊気

 私は焔さんが異常な速さで海を渡るのを体験した瞬間。


 あの時、私を助けた手段は紛れもなくコレだと悟った。


 夜明け前だと言うのに私は、まだ知り合って二日しか経っていない不思議なお姉さんにお姫様抱っこされたまま絶賛、海を駆け抜けている最中です。


 海を人の力だけで駆け抜けるなんて今日までに体験した事などなかった。


 いや、むしろ人間の力だけで海を駆け抜けるなど出来るはずがないんだ。


 常識的に考えれば……。


 但し、一部の人間を除いては……。


 私は、自分では気がつかないほどに不安そうな顔をしていたらしくその様子を見ていた焔が不安を取っ払うように話をしていた。

 

「炎華は、海をこうやって自分の力で渡った事あるかい?」


「ないです。てかできないですよそんな事(笑)」



 私は思わず微笑を溢していた。


 微笑を溢す炎華の表情を見てつられて声を上げて笑みを溢した。


「あははそうだよね、でも私に任せておけば自分の力で怪奇町あっち海泣島こっみを行き来出来るように私が鍛えてあげるから大丈夫さ。そしたらいつでも来れるし何かあったらくればいいし私はいつでも大歓迎だけど」


「なんか色々ありがとうございます。私が自殺しようとしてた時に助けてもらったりとかコレから霊力についてとか色々教わるわけだけど……」


「お礼なんて別にいいよ 私が勝手にそうしたいって思ったから(それに少しでも化物あいつらに立ち向かうだけの戦力が近くにいるだけでもう辛い思いせずに済むはずだからきっと必ず)」



 私と同じ状況にありながらも本当は、泣きたいくらい辛い思いしてるはずなのに私を救ってくれて私を前へと導いてくれた命の恩人である焔さんは、今は私の中では物語に登場する心優しく勇敢な英雄のような存在だった。


 しばらく会話を続けていると島が見え初め距離が近いと確信した焔は、さらに加速し、島を目掛けてありったけの力を使った。


 やがて無事に島にたどり着いた。


 その頃には、日が昇り朝日が顔をだしてまるで私を歓迎しているかのように輝いていた。


 私は漁船の並ぶ港で降ろしてもらった。


 なんと言うかこの島は私の済む怪奇町とは、うんと違った雰囲気でどこか不思議な雰囲気の漂う島だった。


 焔も炎華を降ろして何事もなく無事に島へと帰還した。


「よし、っと到着。 ようこそ炎華。 ここが私の故郷の海鳴島だ」


「初めてこの島に来たけど何というか私の住む街と近くにあると言うのに全然知らない場所って感じで何か不思議な所ですね」


「まぁ、不思議と言えば不思議かなぁ〜色々と……」


 自然、溢れたこの島は、静かでとても豊かで空気も澄んでいてとても良い場所だった。


 因みに何故ここが海鳴島うみなきじまと呼ぶかと言うと昔の人の言い伝えで波の音が何故だか泣いてるような感じに聞こえたからだとそう伝わっている。


 しかし、本当はそれだけではないじゃないかとも噂になっているとかなってないとか詳しい事は、分からない。


 港から焔さんの後を追うようにしばらく歩き続けると、とある駄菓子屋の前にたどり着いた。


「焔さん。 えっと? ここ駄菓子屋ですよね?」


「うん、そうだよ。 ここ駄菓子屋&実家。 私の家は、両親が駄菓子屋経営してたからそのまんまになってたから私が引き継ぎでやってるんだよ。 それはそうとほれ早く上がって」


「そうなんですね。それじゃあ、おっ、お邪魔します」



 駄菓子屋を営んでいる為、玄関は、正面からではなく裏に周り裏から家に入るようだ。

 

 弟と二人暮らしと聞いていたが、家の中にはそれらしい人物はいなかった。


「あの、焔さん弟さんと二人暮らしって聞いてたけどいないんですか?」



「あっごめん、あいつ滅多に帰って来ないからほら、この島にも化物が現れたって話したよね? それで弟は、強くなる為に修行したり仲間を集めたりでやる事いっぱいらしくて稀にしか帰って来ないんだ(笑)神出鬼没ってやつ? 笑っちゃうよね? あっ、もしかして会いたかったかな?」


「あっ、いえいえ会いたいと言う訳ではなくて姿がなかったから気になっていただけなので……」


 後で詳しく聞いた話であるが、弟さんは、妖怪と戦って、協力関係を結ぶなどして化物と戦う為の戦力を探し集めてるらしい。


 それに伴い独自の手段で霊気、霊力を共に高めているとかまぁそれは、あくまで焔さんが弟から直接聞いた話なので詳しい事は本人に会って詳しく事を聞いてみないと分からない。


 ちなみに焔さんの実家は、割と広く部屋もいくつかあった。

 そこで私は焔さんの後を追うように連れて来られた和室へと足を進めた。


「炎華、いきなりで悪いがここで一つ霊力開放の修行をやってみるか?」


「はい、さっそくですね」



 修行を開始するに至って和室に入り、焔さんが用意してくれた座布団の上に座った私は、焔さんの言われるがままに瞳を閉じて無の状態となった。


 しばらく、何も起きないからこれで合ってる? のかと疑問に思い始めた直後の事だった。

 

 私の中に微細な力の感覚を感じ始めた。

 やがて集中力が途切れ目を開けると私の手の平に一つモヤモヤした物体があった。


 やがてその物体は、分離し二つになる所までは良かったがその後まるで何もなかったかのように消失した。


「これって霊力ですか? 焔さん?」



「まだ完璧な形になってないからまだ霊力と言いきれないがこのまま行けばいずれは、正式な形として炎華の力となるだろう」


「それなら修行あるのみですね? 例えどんな力であっても自分の力を使いこなさせるようになりたいです」


「そうだ。その勢いを忘れずにこれから修行を続けていこうか」





 炎華自身は、まだ気づいてないようだったが私は、炎華の霊気が異常なまでに溢れている事に驚いていた。


 霊力の解放をしているだけだと言うのに私ですら霊力解放時ですらこのような規格外な霊気を放出する事は不可能なのに何故か炎華は、それを可能としている。


 これは、炎華には何か秘密があるのかもと不思議に思うが今は何も考えずにそっとしていた。




「炎華、とりあえず初回の修行をコレでひとまずとして少し話を聞いてくれるか?」


「はい、ところで話とはどんな話ですか?」




 炎華の問いかけに応じるように静かにその場に座り焔は、語り出した。


「まぁ、何というか私や炎華、君の力を発動する上で必ずしも知っておくべき重要な事だと思ってほしい。まず、私や炎華が持つ霊力を別の言い方で内力とする。ならばそのまたその逆の力も当然あるわけでその力は、霊力と言い又は、外力と言う」


「その二つの力を使える事が最終的な目標って事ですね?」


「そうの通りだ」


 霊気に霊力とか知らない事ばかりだ。


 あの日、両親が、化物に喰べられられなかったらこんな事知る事もなく平和な日常を過ごせていたんだと胸の内で微かに思っていた。


 だが、今更、過去の出来事をうじうじ悩んでいた所で過去に戻れるわけでもないし、仮に戻れたとしてあの日あの時の自分には、何か出来ただろうか? 。


 答えは、当然出来ないの一択しかなかった。


 だから、私は、過ぎ去った過去より今を進み自分が強くなる事を考えて生きて行くと決めたのであった。



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