第三怪 火ヲ操ル者

 家を飛び出してきた私は、堤防から綺麗な夜の海を見ていた。


 今まで近くで優しく暖かく温もりを感じていた大切な両親を失ってしまった。

 そのせいで胸の奥にぽっかりと大きな穴が空いたみたいだった。


 突然の出来事でショックから立ち直れずもうこのまま終わってもいいと思って無意識に堤防の柵に手を乗せて柵を上り、そのまま海へとその身を投げ出していた。


 私は、夜の海へと降下していた。


 だが……。


 その瞬間。

 誰かによってそれは、止められた。




 咄嗟の判断で近くにいた見ず知らずの人が素早く行動に移り私の動作を察知し助けに入っていたのだ。


「君、大丈夫かい? 何かあったかい?」



 気がつけば、私はその人にお姫様抱っこされ無事に助けられていた。

 黒シャツに藍色のパンツを履いており髪は灰色のショートで一つ結びをしている。

 瞳は、薄紫をしており見た目クールで少し変わった雰囲気のある人だった。


「えっとあなたは誰ですか?」



「私は、黒染焔くろぞめほむらだ。それよか君、自殺でもしようとしてたみたいだけど何かあったんならお姉さんに話聞かせてくれないかい? 無理にとは言わないから話せるならでいいんだ」


「話させて下さいどうせ私には誰も話を聞いてくれる人がいないので(何だろう? この女性の事を見ていると何故だか猛烈に胸がドキドキして不思議と心を許してしまいたくなってしまいそうになる)」


 まぁそれはさておきこの人は、私の話を受け入れてくれそうな気がしたが、本当は少し怖かった。


 心の奥底で私の話を受け入れてもらえないのではないかと思いつつ不安を取っ払い閉じていた口をゆっくりと開き話し出した。


「今日実は、私の誕生日だったんです。それで学校が終わって楽しみに帰宅したら家に奇妙な化け物がいてそいつが両親を喰らっててでも無力な私は恐怖で体も動かず何も出来なくてそれで……」


 私は話すと何だろうまたあの時の光景が浮かんできて涙が出てきて話を続けることが出来ず中断した。すると、話を聞いてくれた女性は、何も言わずに私の事を抱きしめてくれた。


「そっかそれは辛かったよね それでそのことについてその君の話に出て来た化け物ってのはその場所に穴を出現させたりしてなかったかい?」


「えっ? 穴ですか? それは、ありました。その化け物は、両親を喰らった後その穴に帰って行きましたけど何でそれを知ってるんですか?


 私は、私以外にもあの化け物の事について知ってる人がいるとは思っていなかったので驚きを隠せずにいた。


「やはりそうか。実は、私も同じなんだよ少し前に私もその化け物に会って両親やたくさんの人を喰われた。

 だけど……最悪、私と弟は、自らの力でやつを追っ払いやり過ごす事が出来ている。今も弟とは、島で二人暮らししてるよ」


「そうだったですね。なんか私以外にもあの化け物と遭遇してる人がいて少し安心したって言うのは変だけど一人じゃないって感じで良かったです」


 焔は、炎華の話を聞きつつパンツのポケットに手を入れタバコを取り出した。


 すると、次の瞬間……。


 私は、驚きの光景を目の当たりした。

 その光景とはこの女性は、タバコに火を付けるのにライターなどを使わずに指から火を点火させたのだ。

 どうゆう原理なのか普通ならそんな事は出来ない。


 焔は、自分がタバコに火をつけた方法に食い入るように見る炎華の姿がかわいいく思えた為、口を開きタバコに火をつけた方法を話し出した。


「火をつけた方法気になるかい? 気になるなら教えてあげるよ。まずこの火は、私の霊力って言う力。まぁこの力は、君も持ってるだろ? 持ってないはずはないんだ何せ君もあの化け物を視認出来ているんだから」



「えっと? それはど言う事ですか?」


「簡単に言うとだ奴らを視認できる人間には、霊気が流れており身体を循環しているその為に奴らを認識出来ているそしてその霊気を己が思う力へと変換する事で霊力となり不思議な力を発動出来るつまりだ私で言うと火を操るみたいな感じだ」



 焔さんの話を聞いたところどうやら私にも霊気が流れておりそれを変換する事によって霊力と言う力が発動する事は、可能みたいだが、ただ説明だけされても頭の中ではパッとした簡素なイメージしかわかず理解はしたもののまだ具体的なイメージは、わかず私は少し難しい顔をしてしまっていた。



 すると、焔の顔は少し微笑んでいた。


「そんなに難しい顔して考えなくてもいいよ実際そんなものやってみたらわかる事だしなんなら私は能力発動までの手助けをしてあげるよ。そしたら次奴らが怪奇町ここを攻めてきた時には、今度は怯えず挑めるでしょ?」



「はい、お願いします。 私は、もう二度とあんな思いはしたくないです弱い自分が嫌いです何もせずただビクビク怖いものから怯えてただ何もせず泣く事しか出来ない自分からは卒業したいです」


 その後、私はと言うも焔さんに霊力解放の手助けを、してもらう為一時的に怪奇町を離れる事となった。


 手助けをする場所は、ここから少し離れた島で焔さんの故郷だそうです。

 

 焔さんとそこに向かう為、私は明日の朝方に出発する為今日は、一旦家に帰り休息を取り明日の準備に備えた。


 翌朝、焔さんとの約束通りの時間に堤防のところにまだ日の浅い薄暗い時間帯に到着した。


 そこには焔さんが座って待っていた。



「どうやら来たみたいだね? ちゃんと眠れたかい?」


「それなりには……ここを少し離れるのは少し寂しいなって思って……」


「まっ離れるって言っても近くだしそんな事気にしなくて良いよ」


「ありがとうございます」


 私はふと思う事があったそれはと言うと確か向かう場所は、島だと聞いていたがその島に向かう為の船など当たりを見渡すがどこにもそれらしき物は一切なく一体どうやって島に向かうのだろうと疑問を抱えていた。

 

 が、その時は、すぐさま訪れた。


「炎華、またお姫様抱っこするから後、しっかりつかまっててね」ってなんだか意味ありげで変なことを言っていた。


 なぜだろう? この言葉には、嫌な感じがしていた。


 焔は、口を開き「神速じんそく」と掛け声を放った。

 するとその声とほぼ同時に焔の体は加速し広い海を渡って行った。



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