第14話 選ぶのは、君のため
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スマホの左上が0時を表示すると同時に、私はソシャゲのアイコンを押した。
いつも通りの金曜日の夜。1日1回の無料ガチャを回して、毒にも薬にもならないキャラが出たところでスマホを閉じ、本棚のラノベを物色する。
午前11時に、駅のカフェ。それが明日の私の予定で、4月のスケジュールに書きこまれた唯一の予定。まぁ、新刊の発売日とか、書いてもいいんだけど。よく買う出版社の発売日は全部覚えてるし、書く意味ないんだよな……。
そんな私の懸念事項といえば、そう。
「どいつを持っていくか……」
明日持っていくラノベのセレクト、である。話のネタになりそうなのは、アニメ化した作品。あえて好きな作品を持っていって、相手の深層意識に刷り込むという手もアリ。1巻で完結しているものや、最近発売されたものはオススメしやすいし……。
しばらく本棚の前で悩んで、私は1冊を手に取った。数年前にアニメ化されて、最近完結した作品。これなら話題性も十分だし、イラストがそこまで萌え萌えしてないから受け入れやすそうだし、作者が次に新シリーズを出したときにも話のネタになる。
「……てか、なんでこんな真面目に選んでるんだ、私」
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お気に入りの色付きリップを丁寧に唇に塗って、スマホを肩掛けショルダーにイン。玄関の鏡で髪型をチェック、よし。進級祝いに買ってもらった新品のスニーカーを履いて、出発! 忘れ物、たぶんなし!
バス停に着くと、既に数人が並んでバスを待っていた。スーツの男性、日傘のおばさん、スーツのお姉さん……並んでまもなくすると、バスがなめらかにバス停に停まって、私はお姉さんに続いて乗車する。
後ろのほうの席に座って、スマホを取り出す。うん、時間ぴったり。順調に行けば、待ち合わせの時刻ちょうどに着きそう。相良さんからいつ連絡が来てもいいように、スマホは手に持ったままで外の景色を見る。
今日は、というか今日も、4月にしては暑さを感じる日。桜の花はとっくの昔に落ちてしまって、今は青々とした葉っぱが木を彩っている。葉桜の季節。私がいちばん好きな季節、かもしれない。今のところ。
窓の向こうで、中学生とおぼしき子たちが列をなして自転車をこいでいる。体操着を着てるあたり、部活の遠征かな。その表情はバスの中からでもわかるくらい明るくて、まぶしくて、ちょっと私の胸は痛んだ。次の部誌に載せる作品、部活モノにしようかな……。
やがてバスは駅のロータリーにすべりこみ、定刻通りに待ち合わせ場所に着いた。4月12日、午前11時。特に連絡が来ていないことを確認して、私はスマホをショルダーバッグにしまう。土曜日だけあって、駅は少し人が多めに思えるけど、平日もこれくらいの人手かも。
指定されたカフェを難なく見つけて、でもそのまま入ってしまうのもアレかなとかなんとか考えて、結局入る。
店内はお昼時間近なだけあって、そこそこ席が埋まっていた。そのどこかに相良さんがいるはずだと目を凝らして、なかなか見つからないことに少し焦る。頼みの綱、スマホは何も言わない。先に座ってる……のかな?
「先頭のお客様、こちらのレジへどうぞ」
相良さんの姿を見つけられないまま、店員さんに呼ばれてしまった。
「あっ、はい!」
あらかじめ決めていた、アイスカフェラテを注文して、ようやく。
「相良さん!」
私を先頭に伸びる列、その後方に相良さんがいたことに、気づいたのだった。
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