異世界にて短歌詠む

異世界短歌 春

異なる世帰りし父の残したるわが名はサクラ春の花なり

(勇者の子:サクラ

 私の父は勇者だった。そして魔法使いと恋に落ちて私が生まれたのだが、父は異世界、チキュウに帰ることになってしまったらしい。その父が、私に残してくれたものの中で一番良かったと思っているのが、このサクラという名だ。春の異世界の花、サクラ……どんな花なのか、一度見てみたいものだ)


色の無きこの世界へと花を呼ぶ桃色の樹々はじめてのいろ

(召喚士:クマリー

 この世界には色というものがない。異世界からの来客がそう言った。それに対し、私は色とは何かと興味がわき、異世界から色を召喚しよう。そう思い至った。異世界で色と言えば花らしいので、異世界の花を召還したのだが……取り寄せられたのは、自分の語彙力では説明できない程に美しい花が咲く樹木だった。この花を輝かせている花びらの色というものの名は、桃色と言うらしい……なんと綺麗なのだ。この色が、この世界の始めての色なのだろう)


桜餅なる古文書に載るお菓子所望し駄々をこねるは娘

(パティシエ:ハムラ

 まったく、わが娘にも困ったものだ。超古代の書物を読み漁って、お菓子をねだってくるのだから!

 今や桜餅なる菓子は存在しないのに、それが食べたいと駄々をこねている。

 仕方がない、そう思い作る私も相当甘いのだろうが。

 古文書をよく読んで、作りましょうかね……)

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