エルフの里で俳句詠む
新妻やルビーグラッセ涙味
(季語=ルビーグラッセ【るびいぐらっせ】:新年
新年の挨拶にエルフの友人宅へ行くと、何とその友人は結婚していた。その奥さんが作ってくれた料理が、果物をルビー色に甘く煮詰めた甘露煮であるルビーグラッセだ。エルフの新年のご馳走としては外せない一品だという。なんでも、友人や自分のお母さんに厳しく教えられてやっと作ることができたらしい。泣きながらも作れた時の喜びは、前年一番だったという。純人間の私にとっては甘すぎる味だったが、夫婦の笑顔を見ていると彼女が努力のために流した涙。その味がする気がした時に詠んだ一句)
蛇毒草傘に変え待つ子妖精
(季語=蛇毒草【じゃどくそう】:夏
ある雨季の事だった。エルフの里へと向かう途中に蛇毒草と言う毒草が生えていた。
この大きな草には蛇の毒の様な毒性があるので注意しろと言われていたので、避けようとしたら、その下から子供の妖精が顔を出した。どうやら、大きな葉を傘に、誰かを待っているらしい。母を待っているのかなと思うが、毒草を傘にするとは……その後、里で聞くと草の毒は基本妖精には効かないから、大きな葉である蛇毒草は彼ら傘にちょうどいいという。なるほど……これも、エルフの里の雨季の光景かと思い、読んだ一句)
骨ナイフ聖香木を削りけり
(季語=聖香木【せいこうぼく】:秋
秋にエルフの里を訪れる時の楽しみはたくさんあるが、今年は珍しいもてなしを受けた。聖なる木デネスの落ち枝を特殊な製法で干し作る、聖香木の香りをかぐことができたのだ。私の友人の奥さんが、骨でできたナイフで香木を削る様子を見て、この一句を詠んだ。その香りは、句を作るものとしては失格だろうが、今の私では言葉にできない香りだった。骨ナイフなのは、金気を嫌うエルフらしい。だが、よくよく聞くと、骨ナイフの材料は、先祖の肋骨だという。滅多にできない聖なる体験をさせていただくことができた。)
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