第106話 変化?

 シロとハク。2匹は元気に育っている。すでに体長20mぐらいはあるだろう。生まれて数日なのに、かなりデカい。


 ---------------やっぱりデカいね。さすが巨大生物だね。


《はい。まだまだ大きくなりますよ》


 ---------------だろうね。


 拾ってきた卵だし、体色も全然違うので心配だったが、この育ちっぷりをみると僕らの子供という気分が増してくる。


 そんなある日のことだった。

 僕らがのんびり尻尾の椅子に腰掛けていると、周りにモフモフたちが集まってきた。

 いつも集まってはくるのだが、今日は特にたくさん集まってきた。僕らの周りにはモフモフたちがギッシリだ。


 --------------なんだろう。凄く集まってきたね。


《はい。天気が良いからでしょうか。よく分かりませんね》


 集まってきた理由はさっぱり分からないが、可愛いので問題はない。

 と思ったのだが。


『『コカォォン! クルクカァァン! キュルルゥン!』』


 シロとハクが何か言っている。そして僕らの方を見ながら暴れている。

 どうやらシロとハクは僕らの方に近寄りたいようなのだが、モフモフたちに阻まれて動けない。

 僕らに近寄りたいシロとハク。僕らの周りから動きたくないモフモフたち。両者の間で揉み合いが始まった。


 ---------------これは! シロとハクのコンビ対モフモフ軍団!


《どうなるか見守りましょう》


 僕らはどちらの味方をするわけでもなく、見守ることにした。

 シロとハク。生まれて初めての戦いは、モフモフ軍団。この戦いに勝利して、強く立派に育って欲しい。


 シロが全力で目の前のモフモフに体当たりする。モフモフが少し退いた。


 ---------------やるな、シロ。


 今度はハクが尻尾から炎を出した。炎を受けたモフモフが少し焦げた。


 ---------------おお、炎を出した。ハク、凄い。本能かな。


《モフモフが少し焦げましたよ》


 巨大生物同士、白熱の戦いが繰り広げられているわけだが、迫力はない。むしろ可愛い。


 ---------------シロとハク、頑張っているね。


《はい。大群を相手に凄いですね》


 圧倒的に数で不利だが、シロとハクは健闘している。


《モフモフはたくさんいますけど、シロとハクに反撃しないので安心ですね》


 ---------------まあ押し潰されているけどね。


 モフモフたちに攻撃の意識はないと思うが、シロとハクはギュウギュウに押し潰されて苦しそうだ。

 それでもシロとハクはジリジリと前に進んで、僕らのところへ向かってくる。なかなかの根性だ。


 シロとハク、頑張れ!

 そう思って見守っているうちに、ついにシロとハクは僕らの元に到着した。僕らは健闘を讃えて挨拶をする。


『ゴガオオオン!』(こんにちは)


『『コカォォン』』


 シロとハクは疲れながらも返事をした。シロとハクの初陣は、立派な勝利と言って良いだろう。

 これならば他の巨大生物と戦っても安心だ。



 ◇



 頑張ったあとは食事の時間。シロとハクは、僕らが獲ってきたものを当たり前のように食べている。シロとハクともたくさん食べてすくすくと成長している。とても可愛い。

 そう思って甘やかしていたのだが、これはいけない。野生の巨大生物らしく、もっと厳しくしなくては。


 ---------------シロとハクを食糧調達に連れて行こう。


《えっ、シロとハクもですか》


 ---------------自分の食事は自分で獲った方が良いかと思ってね。


《それは良いですね。一緒に連れていきましょう》


 手始めに一番弱いと思う巨大イカを獲りにいく。程なくちょうど良さそうな小ぶりの巨大イカを発見した。

 シロとハクをけしかける。


 巨大イカの方がシロとハクより少し大きい。勝負の行方は分からない。どうなるだろうか。

 僕らの不安を一掃するように巨大イカを、シロとハクがコンビネーションで追い詰める。


 ---------------おお、強い!


《楽勝でしたね》


 シロとハクが圧勝した。双子の息の合ったコンビネーションで戦闘力が増している。まだまだ僕らに比べると小さいので力強さはないけれど、それでもこの周辺で負けることはないだろう。これなら目を離しても安心だ。

 そんなシロとハクの戦いぶりを見て、ニノが呟く。


《シロとハク。よく頑張ったね》


 ニノの言葉がシロとハクに聞こえるわけではないが、ニノは優しくシロとハクを誉めている。

 僕はニノが僕以外に話しかける姿を初めて見た。僕はそんなニノの姿を見て、嬉しく思った。そして少しだけ寂しく思った。

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