第105話 名前をつけよう?

 卵の殻が割れて、中から小型の僕らみたいな生物が誕生した。

 2匹いる。どうやら双子だ。


 その産まれてきた2匹の生物。姿形は僕らに似ているのだが、色がだいぶ違っている。

 1匹は白色にうっすらと緑色が入っている。もう1匹は白色にうっすらとオレンジ色が入っている。

 2匹は多少の違いがあるものの、どちらもほとんど白色だ。濃い焦げ茶色の僕らとは、だいぶ違う。


 ---------------なんか2匹とも白っぽいね。


《はい。白いですね》


 ---------------全く色が違うけど、本当に同種なのかな?


《色は違いますけど、大丈夫ですよ》


 大丈夫ですよ……それは『細かいことを気にするな』という意味だろうか。少し不安を覚えるが、姿形は同じなのでヨシとしよう。


 2匹の生物が僕らをジッと見ている。僕は子育てなどしたことがない。しかも巨大生物の子育てだ。何をして良いのか、全く分かるはずもない。


 さて、どうしたものだろう。全く分からないが、困ったときは相手が赤ちゃんといえど挨拶だ。僕らにはそれしかない。


 ---------------よし、挨拶してみよう。


《挨拶、良いですね》


 2匹に向かって、挨拶してみる。


『ゴガオオオン!』(こんにちは)


 驚かさないように、控えめに言ってみた。

 すると2匹が僕らの挨拶に反応した。


『コカォォン』

『コカォォン』


 僕らの真似をして『コカォォン』と言っている。

 とても可愛い。


 ---------------か、可愛い。


《凄く可愛いですね》


 2匹とも挨拶が気に入ったのか、繰り返し鳴き始めた。


『コカォォン』

『コカォォン』


 産まれてすぐにこの反応だ。2匹の生物が僕らの同種で、僕らの子供のような気分になってきた。いや、気分というだけではなく、これは本当に同種だろう。


《他の挨拶もしてみましょうよ》


 ---------------そうだね。


 残り3種類の挨拶を2匹に向かって披露してみる。


『ピヤアアアン!』(ありがとう)


 続けて。


『グルグガガアアン!』(やめなさい)


 最後に。


『キュルルルゥゥン!』(ごめんなさい)


 僕らの挨拶を聞いて、2匹が好き勝手に鳴き始めた。


『『ピヤァァァン、クルクカァァン、キュルルゥン』』


 さっそく僕らの挨拶を覚えたようだ。

 意味は分かっていないと思うが、僕らの真似をして鳴いている。


《真似をしてますね》


 ---------------意外に賢いね。


《当然ですよ!》


 何故かニノがドヤっている。産まれたばかりの2匹も可愛いけれど、ニノも可愛い。気がつけば、僕の周りが可愛いものだらけになっている。


《名前はつけないのですか》


 ニノが積極的に質問してきた。


 ---------------そうだね、名前はつけた方がいいよね。


 確かに名前はあった方が良い。

 2匹の生物を眺めながら、しばしの間、名前を考える。


 ---------------シロとハクでどうだろう?


《良いですね。それにしましょう》


 2匹とも白っぽいのでシロとハク。見たままだ。

 うっすらと緑色が入った方をシロ。

 うっすらとオレンジ色が入った方をハク。

 正直なところ、僕にはほんの少し色が違う意外は、2匹の区別が全くつかない。しかしニノならきっと2匹の違いを分かっていることだろう。


 無事に産まれて、名前もつけた。あとはすくすくと育つことに期待しよう。

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