第104話 何か産まれた?

 僕らはデルゾン島から巨大な卵をお持ち帰りした。

 今、モフモフ島にいる僕らの隣には、白く光る巨大な卵がある。

 僕らと同じ種族の卵だ。


 現在、モフモフ島に常駐している人間は誰もいない。国連査察団の人たちは、調査期間を終えて帰っている。

 僕らは静かになったモフモフ島で、まじまじと巨大な卵を見つめている。さてこの卵、どうすれば良いのだろう?


 ---------------孵化させるには暖めたりするの?


《放っておけば勝手に産まれてくると思います》


 どうやら放任主義でいいようだ。ここまで運んできたが傷一つ付かずに丈夫だし、何かから襲われる心配をする必要もない。巨大生物は楽で良い。

 いつ孵るのか分からないのは少し困るが、焦ることもないので産まれてくるまで放っておく。どんな子が産まれてくるのかドキドキだ。


 ある日、ノックス中尉とファイン少尉が巨大な卵を見物しにモフモフ島へやってきた。


「これが相棒パウンドの卵か。デカいな」


 ノックス中尉が卵を見上げながら感想を言う。


「どんな子が産まれてくるのでしょうね」


 ファイン少尉は、とても興味深そうに巨大な卵を触っている。


 ファイン少尉に今日は何の用事かと尋ねてみると、巨大な卵をじっくり観察したいとのことだった。

 船の方を見ると、作業員が観察用の機材を上陸させて設置している。

 とある博士が『卵! 卵!』と言って、もの凄く興味を持っているため、どうしても観察をしたいらしい。きっと騒いでいるのは、メカパウンドを作った博士だろう。


 僕らも常にモフモフ島にいるわけではないので、撮影機材の設置は有り難い。僕らがモフモフ島にいない時に産まれたら、撮影した映像を見せてもらおう。


 そうして数週間後。デルゾン島からお持ち帰りしたあと、何日経っても巨大な卵に変化はない。巨大な卵は、今日もモフモフたちに囲まれている。


 ---------------産まれて最初にモフモフを見たら、モフモフを親だと思ったりしないかな。


《どうなんでしょうね。あんまり関係ないと思いますよ》


 ニノは何も気にしていない。『子供が欲しいですね』と言っていたわりには、何のこだわりもなさそうだ。それほど興味がないように見えてしまう。

 これはもしかして産まれる前から育児放棄か?!

 思えば僕らが産んだ卵ではない。落ちていた卵を拾ってきただけだった。そう考えると、他人の子供をさらってきたということか?

 とも思ったが、僕らは人間ではなく変な巨大生物なので、深く考えることは止めにした。



 ◇



 僕らは深海の棲家へ帰って休息していた。今日は朝からモフモフ島へ巨大な卵の様子を確認しに行く。


《そろそろ産まれて欲しいですね》


 ---------------なかなか産まれてこないものだね。


 そんな話をしながらモフモフ島へ上陸する。

 モフモフ島の真ん中に佇む巨大な卵を見ると、前回見たときよりもキラキラと白く光り輝いている。


 ---------------こ、これは?!


《今日は凄く光ってますね》


 見るからに変化があって、いつ産まれてきても不思議ではない雰囲気だ。僕らは緊張しながら、巨大な卵の様子を注視する。


 パリッパリッ!


 少しずつ卵の殻にひびが入ってきた。


 バリバリッ! バリバリバリッ!


 豪快に卵の殻が割れて、中から何かが顔を出してきた。

 小型の僕らだ。進化前の僕らの姿に似ている気がする。


 ---------------ん? 後ろにも何かいる?


《2匹いますね》


 後ろに隠れて、もう1匹いる。どうやら双子だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る