第103話 発見、お持ち帰り?

 僕らは巨大な卵を目指して、森の奥へと進んでいく。

 一般の人間が地図やGPSを持たずに深い森の中を歩いたら、すぐに迷ってしまうことだろう。しかし僕らは巨大生物。木々の上に頭が出ているので、迷うことはない。どこへ行くにも迷わないので安心だ。


 ---------------教えてもらったのは、こっちだよね。


《あと少しだと思います》


 周囲に蛾のような巨大生物が増えてきた。電子機器が壊れてしまうという鱗粉だらけだ。こんな場所に人間は好き好んで近づかないことだろう。ある意味で蛾のような巨大生物がこの島を守っている。


 蛾のような巨大生物が舞う森の中を進んで行くと、ぼんやりと白く光る場所をニノが見つけた。


《あれでしょうか》


 ---------------何か光ってるし、そうかもね。


 僕らは光りの元へ近寄ってみる。

 巨大な卵が白く光っている。これは探していた卵に間違いない!

 ついに僕らは、白く光る巨大な卵を発見した。


 ---------------これが僕らと同じ生物の卵なの?


《そうですよ》


 僕にはピンとこないのだが、ニノが確信しているので、間違いはないのだろう。


 ---------------持って帰ろうか。鱗粉だらけで、ここにいたくないし。


《それが良いですね。持って帰りましょう》


 僕らは巨大な卵をモフモフ島まで持って帰ることにした。少し大変そうだけれど頑張ろう。

 僕らは白く光る巨大な卵をゴロゴロと押しながら、海辺まで運んで行く。わりと乱暴に扱っても傷一つ付かずに丈夫な卵だ。


 ---------------海水に浮くかな?


《入れてみましょう》


 塩水なので浮きやすいと思うのだが、この巨大な卵はどうだろう?

 巨大な卵をそっと海水に入れてみる。


 プカァ。


 浮いた! プカプカ浮いてる。

 浮いてくれるのならば運びやすい。もし沈んでしまったらアルティア共和国のタンカーにでも載せてもらおうと思っていたが、これなら自力で運ぶことができそうだ。


 ---------------よし、このまま浮いた卵を押して帰ろう。


《はい。浮いて良かったです》


 僕らはプカプカと浮く巨大な卵を押しながら帰ることにした。

 プカプカと浮いている巨大な卵を見て、僕はふと心配になった。

 ここで急にこの卵が孵っても大丈夫なのだろうか。産まれてきた赤ちゃんは、いきなり海の上で泳げるのだろうか。


 ---------------ねぇ、ニノ。ここで産まれても大丈夫なの? 産まれてすぐ泳げるのかな?


《たぶん泳げますよ》


 ニノは全く気にしていない。人間の感覚で少し心配してしまったが、僕らは変な巨大生物なのだから気にすることもないのだろう。


 大黄洋たいおうようを抜けて、僕らは細く長い海峡へ入って行く。

 海峡に入ると船が行き交っている。巨大な卵の方は丈夫なので心配はないが、ぶつけて船を沈めてしまったら大問題だ。僕らは慎重に進んでゆく。


 ---------------危ない! また船が来た!


《ここは狭くて大変ですね》


 そんな僕らを見かねたソーヴォイツ連邦が、自国の艦船に巨大な卵を括りつけて大青洋たいせいようまで運んでくれた。とても親切な人たちだ。


 ---------------最初は怖い国だと思ったけど、親切だね。


《有り難いですね》


 ソーヴォイツ連邦に助けてもらって、巨大な卵は無事に大青洋に到着した。その後、巨大な卵はジャピア王国やアルティア共和国に引き継がれて、モフモフ島まで運ばれた。結局、僕らは眺めているだけだった。


 ---------------いやぁ、親切にしてもらって楽だったね。


《眺めているだけで済みましたね》


 遠くデルゾン島で発見された白く光る巨大な卵は、無事にモフモフ島へ到着した。

 ちょっとしたキッカケで探し始めた白く光る巨大な卵。結局、人間に見つけてもらって、人間に運んでもらった。

 僕らだけでは絶対に無理だった。感謝しかない。


『ピヤアアアン!』(ありがとう)

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