第102話 勝負あり?

 踏みつけ攻撃を避けた僕らは起き上がり、再びレッドソックスに対峙する。


 ----------------集中して本気でいくよ!


《やってやりましょう!》


 今までも手を抜いていたわけではないのだが、スポーツライクで戦っていた。これからは野生の巨大生物として、生きるか死ぬかの本気の勝負だ。ニノも眼光鋭く、本気モードだ。


 ---------------頑丈過ぎるから、仰向けにしてやろう。


《ひっくり返すんですね》


 ---------------そう。それだけに集中するよ。


 もしかしたら腹部は柔らかいかもしれない。仮に柔らかくなくても、ひっくり返してやれば、敗北感を感じさせることが出来るだろう。

 僕らはレッドソックスを正面に見据える。


 ---------------突進してきたら、まずは尻尾の炎で迎撃しよう。


《はい》


 --------------怯んだところをカウンターで、左前足を狙って片足タックル。


《はい。短い足なので低く入らないといけませんね》


 --------------カウンターに必要なものは勇気とタイミング。


 そんな話をしていると、レッドソックスが勢いよく突っ込んできた。僕らは作戦通りに、尻尾の炎で迎撃する。


 ボッゴオオオオオオオオオ!


 全力で尻尾の炎を噴射したが、レッドソックスは怯まない。さっそく想定と違ってしまったが、それならば次の手段だ。


 ---------------尻尾でぶん殴るよ。


 僕らは全力で、レッドソックスの横っ面をぶん殴る。

 レッドソックスは少しだけグラついたが、すぐに体勢を立て直し、僕らの方へ向き直る。

 その瞬間、僕らはレッドソックスの左前脚に狙いをつける。山のようなレッドソックスに踏み潰されそうで怖いのだが、僕らは勇気を出してタックルする。


 僕らはレッドソックスの下へ入り込みつつ、左前脚を抱え上げる。

 これは重い! 重すぎる! 凄い重量だ!


 ---------------ぐぉぉぉぉぉ!


《んんんんん!》


 僕らはこのチャンスを活かすしかないとばかりに、レッドソックスの左前脚を全力で持ち上げ、投げ捨てる。

 バランスを崩したレッドソックスは、ひっくり返った。僕らはすかさずレッドソックスの上にのし掛かり、押さえつける。

 レッドソックスは、僕らにのし掛かられて、何も出来ない。覆いかぶさった僕らに対して、レッドソックスご自慢の8本の尻尾も届かない。虚しく宙をブルンブルンと空振りしている。

 そろそろ押さえつけて3秒以上は経ったかな。これはスリーカウントで僕らの勝利と言っていいだろう。


 僕らは押さえつけを解除して、レッドソックスを上から見下ろす。

 勝負のあとは、爽やかに挨拶だ。


『ゴガオオオン!』(こんにちは)


 レッドソックスの反応は、どうだろうか。

 レッドソックスはモゾモゾと8本の尻尾を使って起き上がる。起き上がったレッドソックスは、僕らへ向かって。


『ギャオオオゥゥゥゥン!』(???)


 ?! 何か言った。どんな意味があるかはサッパリ分からないが、再び攻撃してくる気配はない。


『ギャオオオゥゥゥゥン!』(???)


 レッドソックスは再び鳴き声をあげて、僕らの元から去っていった。

 この反応は強敵ともになったと思って良いだろう。完全に一方的な見解だけれども。


 僕らは最強の巨大生物と言われるレッドソックスと強敵ともになった。人類とはトモダチ、最強の巨大生物とは強敵とも。みんな仲間だ。



 ◇



 僕らはレッドソックスと強敵ともになった。それは良かった。

 しかしレッドソックスと強敵ともになるために、デルゾン島に来たわけではない。

 本来の目的は、白く光る巨大な卵を探すためだ。


 ---------------やっと卵探しに戻れるね。


《はい。いよいよですね》


 僕らは再び巨大な卵を目指して、森の奥へと進むことにした。

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