第101話 強敵になろう?

 僕らとレッドソックス。ヘビー級の巨大生物が対峙する。


 アルティア共和国やソーヴォイツ連邦、それに国連などの哨戒機が上空を舞っている。僕らの戦いは、世界中が注目しているようだ。スポーツ観戦ぐらいの気分で見ているのだろう。呑気なものだ。


 僕らがいつもの挨拶をする間もなく、レッドソックスが突進してきた。僕らは正面で受け止めようとしたが、僕らよりも二回りは大きいレッドソックス。受け止めることは出来ずに、僕らは軽々と後方へ弾き飛ばされる。


 ---------------いやいや、凄いパワーだね。


《ズッシリきましたね》


 レッドソックスは、再びジリジリと僕らに近寄ってくる。今度は僕らの方から突進してみることにする。


 ---------------いつものツノ攻撃いくよ。


《はい。やり返しましょう》


 僕らはレッドソックスに正面から突進して、全力でツノを突き立てた。


 グワギィィィィィン!!!


 僕らのツノが弾かれた。

 見た目の割に体表が超硬い。それにビクともしなかった。


 ---------------えっ、どうなってるの?!


《暗黒ヤドカリの殻ぐらい硬いですよ》


 僕らは、暗黒ヤドカリの殻に小さな穴を開けるだけで、苦労したことを思い出した。

 あの時は一本足スタイルのヘッドバット、そこへ巨大ミサイルという人間のサポートがあり、何とかヒビを入れることが出来た。最後にヒビを目掛けてヘッドバンキングを繰り出して、やっとのことで小さな穴を開けた。


 暗黒ヤドカリよりパワフルで突進力のあるレッドソックス。暗黒ヤドカリと時と同じことを出来る気がしない。

 今回は巨大ミサイルという人間からのサポートもない。


 僕らはレッドソックスのプレッシャーに負けて、ジリジリと後退りしてしまう。レッドソックスは、悠々と近寄ってくる。


 このままレッドソックスの正面にいては苦しいと思い、後方へ回ってみることにした。僕らはスピードを活かして、レッドソックスの背後をとる。進化のおかげで、スピードならレッドソックスを上回っている。


 背後に回ってレッドソックスをよく見ると、尻尾の数が8本もある。ウネウネと一本ずつに意思があるかのように動いている。

 そんな8本の尻尾の動きは、ジャピア王国で戦った暗黒8本首を彷彿とさせる。一度死にかけた嫌な思い出が蘇る。


 ---------------うわぁ、あのウネウネは嫌だね。


《はい。あの動きはもう見たくありませんでした》


 レッドソックスは、8本の長い尻尾の先についたゴツゴツとした球体を、背後に回った僕らに向かって執拗にぶつけくる。


 ドガアアア! ドガアアア! ドガアアア!


 不規則な動きで、とても避けられたものではない。


 ---------------痛い! 痛い!


《尻尾が邪魔で近づけないですね》


 この8本の尻尾攻撃は手に負えない。

 結局、僕らはレッドソックスの正面に戻ってきた。

 正面に戻った僕らを見て、レッドソックスが突進してくる。僕らはなす術もなく後方へ吹き飛ばされる。

 僕らはズルズルと後退させられ、反撃できない。


 ---------------これは厳しいね。


《やっぱり強いですね》


 僕らがレッドソックスの体当たりによってヨロヨロしていると、その足元を目掛けて、レッドソックスの尻尾が襲ってきた。

 僕らは足元への攻撃をモロに食らってしまい、転んでしまう。

 それを見たレッドソックスは、転がっている僕らへ向かって、両前脚をガバッと振り上げる。


 圧倒的な巨体で、僕らを踏み潰す気か?! 

 これはマズイ!!


 ---------------避けないと死ぬ!


《はい!》


 ドッスウウウゥゥゥゥンンンンッッッン!!!

 バリッ! バリバリッ! ビキビキビキッッ!!!


 大地震のように大地が揺れ、地面がひび割れて、踏みつけた箇所には、

大きな2つの穴が空いてしまった。


 僕らは何とか身体を反転させて、踏みつけ攻撃を避けていた。もし踏みつけられていたらと想像するとゾッとする。

 レッドソックスに殺意はないのかもしれないが、これを食らったら死んでしまう。気軽に一戦交えるなど甘すぎた。


 強者ともか。死か。


 僕らは巨大な卵を持ち帰る。そのためにはここで死ぬ訳にも逃げる訳にもいかない。

 一矢報いて、この戦いを終わらせる!


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